kanappe

哀れなるものたちのkanappeのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.5
私は結構今まで男性が風俗に行って、好きでもない職業女を買う事が理解できなかった。

男性と話していると「男だから仕方がない」「本能だから」と言う。男性性に託けて御託を並べている。別にいい、賛同ができないだけで需要と供給があるのはわかる。
その理屈をなんとか理解しようと努力しても、最終的に男が女を「売女」だとか「ふしだら」だとか、ひどい言葉を並べて、女性を下等な生き物だと批判するロジックがわからなくて頭を抱えていた。

本作の主人公のベラは不条理な現実の代弁者であり、私を癒してくれる存在だった。
彼女がかつて男性の有害性に蹂躙され、捨ててしまった世界を、生まれたての脳で「生き直す」。
現代的なフェミニズム作品を世に送り出す際に、古風なフランケンシュタイン的奇譚がこんなにも斬新になるだなんて、みなさん思いもしませんよね。

かつて時代のせいで抑圧されていった全ての女性の気持ちを思うと悼まれないのは、最近だとリドリースコットの「ナポレオン」だけれど、ベラとジョゼフィーヌの状況って、すごく似ていたのだろう。

エマストーンが世界に触れて、少しずつ知を得ていく演技は圧巻。マークラファロのキャラには何回も笑わされた!サイテーだけどな!
個人的にはハリーのキャラがすごく私に似ていて、とても好きだった。

ヨルゴスランティモス監督は初期の「籠の中の乙女」や「聖なる鹿殺し」のような取り返しがつかないくらいドギツイ奴がすこーし恋しいけれど、なるたけマイルドに(18禁だけど)いろんな人を素敵な作品をこれからも届けて欲しいです。
kanappe

kanappe