魔女見習い

哀れなるものたちの魔女見習いのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.6
正直、序盤〜中盤ぐらいまでは「どうかなこれ?」と半信半疑だった(セット、衣装、音楽にはもう初っ端から心鷲掴みにされてましたが)
ベラが"自分"で世界を探しに行く話っていっても、結局その冒険だって男にリードされたものじゃんって。パパからお小遣いもらってさ。
主人公が女である意味をちゃんと映画の中で説明してくれないとわたしは納得しないよ、と。
しかしまあ彼女は驚くべき好奇心で世界を発見していくのね。そしてパリでついに男のサポートすら必要なくなる。自分で稼いで生きていける強さを手に入れるのだ。
"生きることは素晴らしい"ということを自分で発見するのだ。一度は生きることに絶望したその身体で。

ヴィクトリアが自分の子を孕って身を投げた気持ちなんとなくわかる。子供を授かってしまえばもう二度と、死ぬまで妻、女であるという牢獄から抜け出すことが出来なくなるからだ。自由や世界を知らず死んでいくことが決まってしまったからだ。彼女にとって自分の娘は呪いだったのだろう。
でもこの物語の美しいところはその呪いが祝いになる点だ。娘の脳を移植され、蘇ったことにより生きるよろこびや自由を初めてヴィクトリアは知った。娘であるベラと共に。
これはヴィクトリアとベラの母娘の物語でもあるのだ。

鑑賞後、いっしょに観に行った人に"what do you think this poor things includes?"と聞かれて、わたしは"everyone and everything"と答えました。
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