ふぁーふぁさん

哀れなるものたちのふぁーふぁさんのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
5.0


これは映画界のビョークでは?


と思わされるヨルゴス監督の天才と変態の紙一重さを感じる作品(物凄く褒めてます)

「何だか凄い作品を観てしまった…」と語彙力0な感想が漏れてしまった。


どなたかの"『ブラックジャック』+『アルジャーノンに花束を』+エロ要素"とのレビューを見て鑑賞を決めましたが、とても納得。


ただエロ要素といっても湿度は無くむしろ痛快。
人との出逢いから世界が広がり、知識や教養を身に付けることで内向きな性欲から遠ざかってゆく描写なども秀逸だし、ベラの思考は常にとても哲学的。



衣装の細部までこだわったポイントやコダックの35mmフィルムを使って再現された世界観であることなど、公式サイトのメイキングを事前に観ておくと更に楽しめると思います。


"ベラの衣裳にはすべて意味があり、ストーンは「ホリーが使用したカラーパレットや素材は、ベラが経験したことや、どのように成長しているかにインスピレーションを得たものです」"


これが本当にそうで、子供の無垢さや残酷さ、思春期の大胆さや危うさ、大人の知性や品格、etc...あらゆる成長が衣装で見事に表現されているのが面白いし美しいし素晴らしい。


閉鎖的且つ支配的な世界に生きていたヴィクトリアはブルーのタフタに細かいタックを施したローブモンタントを、

幼児期(脳ミソだけ)のベラは透明感のあるシアーなオーガンジーや大きなフリル使いで純真無垢さを、

大胆で自由奔放な思春期ベラは鮮やかなイエローマンゴー色のシルクシャンタンのローブデコルテを、

自分の進む道を見つけたベラは黒でマットな素材にメンズライクなジャケット&タイ、ヘアスタイルもタイトにまとめて知的さと意志の強さを、etc...


ベラ以外の登場人物のファッションもそれぞれ色んな表現が散りばめられていて何度も観たくなる。



個人的にはセクションが移り変わる時に挿し込まれているモノクロ映像物凄く好きであれを額縁に入れて飾っておきたいくらい。


作品中にキテレツな動物たちが登場しますが、頭がフレンチブルドッグで胴体がアヒルのがやたら可愛い。

(内臓ドーン!脳ミソシャコシャコー!って切ってるシーンとかあるのでグロいのが苦手な人はダメかも?)



サントラもなかなかイカれてて良いです。


シュヴァンクマイエル監督の『アリス』やティムバートン監督の世界観がお好きな方にはマストな作品ではないでしょうか。


いやー、なんつうかもう全部良かった。

とにかく主演のエマ・ストーンの演技とヨルゴス監督の変態的天才具合にブラボー。