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哀れなるものたちのtkykのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.9
圧倒的な世界観と映像は魅力的だったし、内容もとてもランティモスっぽいと感じた。とにかくセックス描写が満載でエマ・ストーンの体当たりの演技は素晴らしかったと思う。世界観で言えば所々でキメラみたいな奇天烈な動物や変な馬車もどきが現れているのも良かった。

ただ奇想天外の話を何となく良い話へと持っていくのには違和感を感じた。バクスターが行っている事は倫理的にどうかと思う行為であり、その結果生まれ変わったベラが冒険を通して人生を切り拓くと書けば聞こえは良いが彼女の前提条件が倫理的に危ない存在である以上、あまり良い話には思えなかった。
後半ではベラが売春婦になる展開があるが、それを自立しているだとか成長に繋がる経験をしたというように描くのも非常に違和感があった。セックスワーカー自体が卑しい存在であるからとは決して思わないが非常に複雑なバックグラウンドを持つ人達も携わる職業である以上、それを一面的に描くのはあまり受け入れられなかった。

ランティモス映画の倫理観はほとんどの場合ぶっ飛んでいるものであるのに、本作は妙に女性のエンパワーメントを意識しているような描き方や評判がある分、なかなか受け入れにくい作品になっていた。
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