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哀れなるものたちのうのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
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単なるフェミニズム礼賛というだけでなく、
人生の「可逆性」「修正可能性」を描いた良作。

本作の魅力は下記3つ。
①:独特の世界観
おそらく中西イギリスをベースとした社会に、
鶏犬などのキメラやモノレールの様な乗り物、
近未来的なフォルムの船(車は普通!)が掛け合わされていて、まるで夢の中にいる様な感覚に誘われる。
2時間20分と長尺ながら全く飽きる事ない演出に脱帽。

②:①を裏付ける道具・カメラワーク・役者たちの演技力
神は細部に宿ると言う様に、画面のどこを取っても隙がなく、思わず見入ってしまった。
時折キメラ視点?のカメラワークが入る事で、作品への没入感がより増していった。
役者の演技はもちろんの事、特殊メイクや衣装、
道具担当など全員にリスペクト。

③:ベラの成長の巧妙な描き方
ストーリーが進むにつれて色彩が変化していくのが魅力的。

・リスボンまで:
ベラの視点は白黒。
完全にゴッドの支配下にあり、物事を自分で決断できない状況。

・リスボン-パリ
色の基調が華美。
初めての冒険・初めての体験で溢れている外界を表していると考察。

・パリ以降。
写実的な色彩。
他人との対話や現実を目の当たりにすることで、現実社会への理解が深まった事への表れか。
パリ編以前はどこか子供じみた装いだったが、
娼館以降は着こなしが洗練されている点も注目。

④人生の「修正可能性」の提示
幼稚な話し方を好むダンカンや、女性をモノとして捉える将軍との決別を明確に打ち出している点から、本作ではフェミニズムを主題に置いているということは容易に想像できる。

ただ、本作はそんなありきたりな映画とは一線を画している。

・同じ見た目の人間(ベラ)が中身を変えて生き返り、全く違った成長を見せている点
・自分には嘘をついていたゴッドやマックスを許し、共同生活を再開している点
(※ベラだけでなくゴッド・マックスの人間的成長が描かれている点も注目!)

から、
【人生とはやり直しが効くものであり、誰でも成長する事ができる】
という深淵なメッセージを打ち出しているのだ。

人種差別的な振る舞いをした事で
エマ・ストーンの人となりは無理になったけど、
現実世界でも、ベラの様に内面的成長を遂げてほしいですね。

2024年39本
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