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夜の外側 イタリアを震撼させた55日間/夜のロケーションのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

3.5
【モーロ事件の外側】
動画版▽
https://www.youtube.com/watch?v=tgYn76HncUI

2024/8/9(金)より公開が決まったマルコ・ベロッキオの骨太超大作『夜の外側 イタリアを震撼させた55日間』をオンライン試写で一足早く観させていただいたのでレビューを書いていく。

本作はキリスト教民主党党首であるアルド・モーロが極左武装グループ「赤い旅団」に誘拐され殺害された事件を虚実織り交ぜながら描いた6話からなるテレビシリーズである。監督を務めたマルコ・ベロッキオは『夜よ、こんにちは』でも同じテーマを扱っており、5時間半近い時間かけて多面的に事件を描き出している。

第一章では、通りで過激派が暴れているのを受けて、銃器ショップの店主がシャッターを閉めるが突破され銃を奪われる場面から始まる。映画は「奪われる」を軸とし、物理的精神的喪失を描いていく。それは「赤い旅団」サイドの話でも適用され、犯罪と引き換えに失うものが描かれているように思える。

そして、なんといっても印象的なのはヴェルディの《レクイエム》「怒りの日」をバックに、巨大な十字架を背負ったモロー首相が同僚の政治家に見守られながら歩いていく場面であろう。ここにオペラのようなダイナミックさがあり、時代の生贄となった者として描かれている。

映画は1時間ごとに異なる視点から語りなおされるのだが、アイテムが点と点を結ぶように機能しており、例えば「ご聖体」を食べる描写が反復して描かれていたりするのが興味深い。

様々な読み方ができる作品となっているので8/9(金)以降Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほかにてチェックしてほしい作品である。
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