なまけもの

ラストファーマー -最後の農夫/ラストファーマーのなまけもののレビュー・感想・評価

4.2
映像や音楽やストーリー展開からはいい意味でインド映画らしさを感じない。なのに、タミルという土地への愛や信仰をビリビリと感じさせる映画だった。

神前儀式で奉納するため、村に残った最後の農夫が稲を育てる。

主人公の老人マヤンディは、電気も使わず昔ながらの方法で、畑を耕し、牛を飼い、生活して、本当に自然の一部として生きている。まさに「ラストファーマー」。
彼にとってお金など関係なく、農業があってこそ生活が成り立つ。畑や牛がいるからこそ生命活動が保たれる。
その根幹には何か昔から続いてきた「信仰」のようなものを感じる。

個人的に「信仰」はこの映画のテーマの一つになってるんじゃないだろうか。ヴィジャイ・セードゥパティ演じるラマイヤをめぐる不思議なストーリーからもそんな風に感じる。

決して派手さはないけど、タミルの広大な自然や主人公の生活等を丁寧に切り取った美しい映像、役者陣の自然な演技に胸をグッと掴まれた。
VSPの演技の良さが一段と伝わってきたのはもちろんだけど、主人公役のNallandiさんに痺れまくった。なんと本物の農夫だったらしくびっくり!あまりに自然だった。表情アップのシーンが多かったんだけど、無表情から様々な感情が伝わってくるいいお顔だった…。

何より特筆したいのは音そのもの。風や水の音、鳥の声に、タミル人でもないのに郷愁を感じてしまった。エンドロールのヒーリング効果はやばい。

一人の農夫の姿を通じて「自然」や「信仰」と人とのつながりを思い出させてくれるような映画だった。とっても好き!