鶏

名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊の鶏のレビュー・感想・評価

4.2
ケネス・ブラナー監督・主演のポアロシリーズの第3弾でした。ポアロと言えばデヴィッド・スーシェ、デヴィッド・スーシェと言えばポアロと言うほどに人口に膾炙しているポアロのテレビシリーズに"挑戦"するケネス・ポアロですが、第1弾の「オリエント急行の殺人事件」はオーバーアクションじゃねと思ったものの、第2弾の「ナイル殺人事件」では慣れてきたせいもあってか、結構嵌ってきた感じでした。

そして迎えた本作ですが、原作の「ハロウィーン・パーティ」の本筋を踏襲しつつも、舞台をベネチアに移したことを始め、登場人物やシナリオを大幅に変えており、全く新しい物語として楽しめました。特にホラー的な味付けはデヴィッド・スーシェ版にはなかった(というか原作の小説にもなかった)ものであり、この方向性と程よいバランスは非常に良かったと思います。

また、舞台となった水の都・ベネチアの風景が美しくもあり不気味でもあり、この辺りの映像美も見所のひとつだったと感じました。

そう言えば「オリエント急行の殺人事件」は東ヨーロッパ、「ナイル殺人事件」はエジプト、そして本作がベネチアと、ケネス・ブラナーのポアロシリーズはいずれもロンドンを離れた場所での事件であり、またオリエント急行は雪の白、ナイルは砂漠と太陽の黄、そして本作は水の都の青と、作品ごとにこだわった色調があるようで、仮に第4弾があるのであれば、舞台がオランダでチューリップの赤がイメージカラーになるのかなと想像したりしたところです。

俳優陣ですが、ケネス・ブラナー以外で注目したのはミシェル・ヨー。「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」で本年の米国アカデミー賞主演女優賞を受賞した彼女が、不気味な霊媒師を怪演しており、個人的にはエブエブより良かったんじゃないかとすら思いました。
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