デニロ

コンサート・フォー・ジョージのデニロのレビュー・感想・評価

3.5
エリックは言う。ジョージがこれを見たら、そんなことはしなくていい、そう言うだろう。でも、わたしはこういうことでしか悲しみを表せないんだ。2001年に亡くなったジョージ・ハリスンの追悼コンサート。2002年11月29日にロンドンのロイヤルアルバートホールで開催される。主催は音楽監督を務めたエリック・クラプトン。ふたりの間には男と女の愛憎を巡るいろいろがあったんでしょうが、友情だけでははかれない何かがあったのでしょう。ジョージの容貌からは達観しか見えぬのですが。

わたしが、ジョージ・ハリスンを意識したのは高校生の頃買った「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」の一曲/ Within You Without You/。この曲を聴くまでは/ A Day In The Life/が最高だと思っていた。でも、この曲を聞いたら。ビートルズは全部レノン/マッカートニーだと思っていた。その時初めて、そうじゃないんだと。思いつめたようなラブソング/Something/もジョージだった。

ジョージがインド旅行で影響を受けたラヴィ・シャンカルの登場は分かるのですが、何でモンティ・パイソン?つらつらと画面を眺めていたらジョージは彼らのことが大好きだったらしい。ビートルズと深いところでつながっている、とそんなことを感じていたそうだ。また、彼らが資金繰りに苦しくなった際には資金援助をしてもいたそうだ。「木こりの歌」とか数曲歌っていたけれどよくわからない。何しろわたしはモンティ・パイソンを観たことがないのです。

ジョー・ブラウン、トム・ペティ、ジェフ・リン、ビリー・プレストン等々、チョーカッコいいプレイヤーが次々にジョージの曲を演奏します。もちろんポール・マッカ-トニーとリンゴ・スターも。エリックとポールの「While My Guitar Gently Weeps」なんて涙ものです。そんな中で、ジュールズ・ホーランドのピアノをバックに悪魔的な美しさのサム・ブラウンがジョージの遺作「Horse To The Water」を歌い上げるシーンに、わたしはエクスタシーを感じるのです。

さて、エリック・クラプトン。ドラッグにアルコールと散々他人に迷惑をかけていたのだけれど生きながらえている。アルコールでボロボロになっていたエリックを支えたのはジョージだった。ダイアモンドを削るのはダイアモンドだけ。エリックを削り込んで磨いていたもう一人のギタリストジェフ・ベックが今年1月に亡くなった。エリックは、彼のためにも錚々たるメンバーを集めてトリビュート・コンサートをこの5月に開いた。それが彼の悲しみの表現だから。それが生きる者の責任だから。
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