似太郎

絞殺魔の似太郎のレビュー・感想・評価

絞殺魔(1968年製作の映画)
5.0
【映画の「魔」】

黒沢清が『CURE』『蛇の道』を作る際に参考にした異常心理サスペンス。今観てもかなりはハイブローで危険な映画と言える。

分割画面を駆使した映像テクニックとじわじわ煽るような長回し映像が独特なムードを醸し出しており、トニー・カーティス演じる「真犯人=幽霊的存在」の不気味さが際立つシュルレアリスティックな作風は今観ても十分凄い。

娯楽の王様リチャード・フライシャー監督の中でもカルト的位置を占める謎めいた傑作であり実存主義的アプローチが強いホラー映画。撮影はリチャード・H・クラインが担当。ボストンの荒涼とした街並みの風景と殺人鬼の心象風景が見事にマッチングしていて素晴らしい出来栄え。

こういう映画を「オシャレ」として素材にし黒沢清なんぞが焼き直す辺りに些か同時代性を感じたりもするのだが、その手の好事家には堪らない雰囲気のある映画なのだと思う。正直『CURE』や『蛇の道』はあざといと思ったが、こちらは少なくともストレート直球勝負。
似太郎

似太郎