絞殺魔の作品情報・感想・評価

「絞殺魔」に投稿された感想・評価

Minori333

Minori333の感想・評価

3.9
映画のテンポと視点が後半変わるあたりから一気に引き込まれる。独白シーンは見事。そして映画公開後の実際の事件についてもやはり謎に包まれており、怪作となっている。
スプリットもそうだけど取り調べ室での虚実入り混じる回想シーンも印象的。実験映像。
本作のスプリットは画面切り替えの要らない自由なモンタージュでもあるし、一画面より多くの群衆の視線を表現できる手法だった。スプリットにはまだまだ可能性が秘められていそうだ。

このレビューはネタバレを含みます

冒頭に示されるように、実際に1960年代にボストンで起こった連続殺人事件の映画化である。
テンションは落ち着いているが、『仁義なき戦い』に似てるかも、と見ながら思った。

実際の事件の顛末についてはウィキペディア
https://ja.wikipedia.org/wiki/絞殺魔
を参考にしている。間違ってたらすみません。

後半、映画が容疑者視点に移ってから、話が変わる。面白い。スプリット画面や現実と妄想が混濁する演出が、そこから生きてくる。

最後は容疑者が、自身の精神疾患と警察の尋問で、犯人であるような、犯行の再現1人芝居をして終わるが、確実に犯人かどうかはぼかされて終わる。
現実にこの容疑者は、別件逮捕というか、別に同地域で発生していた婦女暴行事件の犯人として裁かれている。

しかも、この映画が作られた後に、容疑者は独房で殺されている。その犯人は不明らしい。
現在は彼の絞殺容疑は、冤罪説も有力視されてるとかで、真相は不明。どうにも曖昧な様子。

映画としては、前述した分割画面や再現映像と尋問シーンが重なったり、なかなか実験的な試みがあって、60年代に、しかも実際の未解決事件の映画化だったにしては、ずいぶん挑戦的な内容。
最後の、白い部屋での尋問シーンもいい。それに容疑者役の演技が、基本的に落ち着いていて、異常者っぽい演技をほとんどしないのも良いと思う。

超能力おじさんの登場は面白かったので、活躍がもっと見たかった。実際にああいう人がいたのだろうか。
ネムル

ネムルの感想・評価

4.5
10年ぶりくらいに2度目の鑑賞。悪夢の傑作。
スプリットスクリーンから最後の長回しまでキレッキレな。
長回しのあいまの、取調室のガラス張りのなかで視点が落ち着かないところが、今回はスゴく印象深かった。

このレビューはネタバレを含みます

連続殺人事件のミステリーかと思いきや序盤はいろいろな変態ばっかり出てきて楽しい。女の子にいたずら電話をする男の口がアップになるのが気持ち悪いんだけどたしか「夕陽のギャングたち」でも口のアップをつなぐシーンがあった


やたらとジャックダニエルをあおってパンティをもみながら犯人を当てようとする超能力者や限りなく犯人に近い精神病をもつ紛らわしい男が出てきて捜査は進んでいるようでまったく進んでいないあたりが面白い。


それもそのはずで犯人はそんなわかりやすい性倒錯者ではなく一般のごく普通の男が犯人だということがわかる。この男は二重人格である。

ここからこの映画のすごいところで、後半はその男が自分のなかにある別人格が犯した罪、隠された真相をどうにか語らせようとする話になっていく。

そして彼は別人格があらわれなければ真面目な人間であって、それを見ている我々は彼のことを不憫に思えてくる。

思えば人間は忌まわしい過去を無意識に隠蔽、改竄するものだと思う。だからこれは殺人の記憶を持った二重人格の男の話ではあるが根本的には我々自身にも当てはまる話だ。この映画はその暗闇の深遠を覗きこもうとする男の話でもある。

死体はオブジェのように無機質なものとして描かれ、殺人の瞬間も描かれない。派手なサスペンスもあるわけではない。それはやはり人間の心理を描きたかった、という理由が大きかったのではないかと思う。

ただそれだと退屈になる可能性があるので中盤まではスプリットスクリーンを使ったのだと思う。これはちょっとくどいけど効果をあげていると思う。

二重人格の暗喩で鏡が随所に出てくる。

そして最後のトニーカーティスの名演。最後に彼はもう一人の自分と出会うことになる。
yuka

yukaの感想・評価

3.7
最初に殺されたおばあさんが犯人のイメージに入り込んでくるところめちゃ怖かった
静の中に動がある
ハデな音楽はなく
刑事も声を荒げない。
一見、淡々と進行し、
要らないと思われるシーンも多い。
だが、それがいい。
ジョージケネディの困惑顔で
ご飯三杯
しゃび

しゃびの感想・評価

4.0
非常によく練り上げられた映画である。
今となってはよくある題材。しかし、あえて映画では表現しづらい部分にスポットライトを当て、それを見事に描ききっている。

映画の中盤、すっと視点が変わるワンシーン。
見事としか言いようがない。
前半のポップなネタ振りがあるからこそ、このシーンに強烈なイメージを残せる。そしてさらに、このシーンが彼の心根に迫る後半の展開へのネタ振りにもなっている。

一歩間違えば大破綻を起こし得る、綱渡りのような映画である。フライシャーはその綱を、いつもの通学路を歩く小学生のように、軽やかに渡りきる。
Mayashico

Mayashicoの感想・評価

4.0
多用されるスプリットスクリーンよりも、巨大なシルエットやモノクロ映像で綴られる絞殺魔の記憶イメージの方が印象的。過去の記憶風景の中に、現在尋問中の刑事の姿が出現して、二人で対話し始めるところ最高。刑事二人が、エレベーターで偶然乗り合わせた人物に疑いを持つもしばらく無言 → 一旦外に出てから、決断を示す車のサンバイザーの開閉、の流れがが死ぬほどカッコいい。
1960年代に発生した連続婦女暴行殺人事件を題材にした犯罪映画。前半は分割画面のスタイリッシュ感が印象的な刑事ミステリだが、後半から一気にノワールになる。今ならプロファイリングを中心に展開するはずの事件だが、なにせ60年代なので警察がエスパーに振り回されたりしてバカっぽい。しかし豪華キャストの味わいに若干の目眩ましを受けるのも事実。後半の犯罪心理の演出は素晴らしい凄みと切れ味。ただただスゲー!スゲー!とため息が出る。取っつきやすいストーリーラインをベースにしながら芸術的な表現を充実させた怪作。
2018.9.22 DVD(字幕)
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