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ザ・クリエイター/創造者のRのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

映画館で友人2人と。

2023年のアメリカの作品。

監督は「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」のギャレス・エドワーズ。

あらすじ

遠くない近未来、人とAIの戦争が激化する世界、元特殊部隊のジョシュア(ジョン・デヴィッド・ワシントン「アムステルダム」)は人類を滅ぼす兵器を創り出したクリエイター「ニールマタ」の潜伏先を見つけ、暗殺に向かう。だが、そこにいたのは「兵器」と呼ばれたAIの少女アルフィー(マデリナ・ユナ・ヴォイルズ)だった。

予告を観た時からずっと気になっていて、SF好きの友だちを誘い続け、早速鑑賞。

結論としてはクオリティは高かったけど…うーん、惜しく感じる作品でした。

お話はあらすじの通り、純度100パーのSFって感じなんだけど、まぁー、さすがギャレス・エドワード、世界観の構築が凄まじい。

まず、世界観の説明から入ると、どうやらこの世界では昔からAI=ロボット文明が進化しているらしく、冒頭のレトロな映像からこれまでの歴史みたいのが語られるんだけど、初めは箱型で単純な動作しかできなかったAIが徐々に進化していき、最終的には人間と同じようなボディを持ち、知能も発達したと。で、この世界とは普通のロボットロボットした感じのAIとは別にシュミラント(模造人間)と呼ばれる人間の顔を模したAIもいて、更に人間に近づいた結果、ある日ニューヨークで核爆発が発生、爆心地であるアメリカ側の西側世界はAI撲滅を宣言し、それに反した東洋はニュー・アジアと名称を変え、AIと生きることを選択、日夜戦争を繰り広げていると。

で、その世界観はまさにアジアの世界観と近未来SF要素のごった煮。舞台は監督がスター・ウォーズ・サーガの一端の作品「ローグ・ワン」を拡大解釈したようなベトナム調のオーガニックな世界に普通に人間と同じようにAIやシュミラントが存在している。また主人公ジョシュアが所属する西側ではAI監視及び爆撃を行う軍事要塞「ノマド」があって、常に上空から青い光を放ち、戦闘時にはその光でマークした敵や場所を爆撃できる未来兵器っぷり、他にも数々の戦闘機や戦車みたいたでっかいのが後半にかけて出てきたりと、まぁー視覚映像だけで観ても上映時間133分退屈しない。

また全体的な絵作りもバキッとした映像にシーン一つ一つが非常にスタイリッシュさに溢れており、例えば戦闘復帰して再びニュー・アジアに潜行する際のダフト・パンク的な電子音楽がバックに流れる中、闇夜に戦闘機から飛び降りて戦地に赴くところとか痺れるくらいカッコいい!!

そういう意味でも一つも緩慢なシーンはなく、常に絵作りがバシッと決まっていて、めちゃくちゃ金かかってんだろうなぁーと思って観てたらパンフの解説見て驚いたんだけど、SFアクション大作映画の標準的な製作費の半分以下で作られているらしい。流石、「ローグ・ワン」でスター・ウォーズを経験したエドワーズ監督、見せたいものの妥協を一切せずに、なおかつ資金繰りまで完璧という、いや、何気に凄い逸材なのでは。

で、本作やっぱ主演のジョン・デヴィッド・ワシントンの存在感が良い。未だにノーランの「テネット」での好演もあって、SFイメージの強い彼だけど、あれからキャリアを重ねて、もはや安心して主演を張れる逞しい俳優さんに成長しているようで、今作では「テネット」とはまた異なる魅力を本作でも存分に発揮していた。父、デンゼル・ワシントンもこの躍進、きっと喜んでるぞ!

つーか、今「イコライザー3」も絶賛放映中なので、何気に同時期に親子それぞれで主演を張った映画が公開されてるってすげぇな!!

また本作の鍵を握るAI、アルフィーを演じた子役のマデリナ・ユナ・ヴォイルズちゃんもめちゃくちゃキュート。見た目は後頭部にかけてシュミタイト独自のがらんどうになった機械が顕になった坊主容なんだけど、それでも子どもらしい愛らしさとそれに反した登場時の無感情なところから徐々にジョシュアとの交流を重ねていく中で感情が育まれていく繊細な演技が絶妙で、ちゃんとその存在感が際立っていた。あと、声も良い!!

他にも日本勢から渡辺謙(「ただいま、つなかん」)が出ていたり、ジョシュアの奥さんで鍵を握るジェンマ・チャン(「ドント・ウォーリー・ダーリン」)も相変わらずのアジアンビューティーで美しすぎたし、アリソン・ジャネイ(「トゥ・レスリー」)が冷酷なキャラクターを演じていたりとキャラクターそれ自体は少ないものの適材適所でそれぞれ好演していた。

ただ、個人的に気に入ったのは渡辺謙演じるハルンの側近のクモみたいな頭をしたAI(名前不明)、他のAIと違った顔立ちと登場の粗暴な感じから気になっていたんだけど、割とニュー・アジアの人間にはちゃんと優しくもあって、戦闘が激化する後半、ノマドによってマークをつけられてしまってミサイルに攻撃されないように逃げようとして、小屋に入ろうとするんだけど、そこに怯える人々が避難しているのをみて、自分の命を顧みず、小屋に入ることを止め、そのまま爆撃でコッパ微塵になってしまう最期とか哀しかったなぁ。

とまぁそんな感じで全体的な絵作りは申し分ないんだけど、お話的には…うーん!という感じ。悪くはない!悪くはないんだけど、全体的に見せ場が思った以上に少なすぎる。アクションパートがあんまりないというのもあるんだけど、やっていることは弾道が見える銃撃戦がほとんどで今作ならではのギミックもあんまりないし、見せ方としてもあんまり新鮮味がないので、絵は凄いのにケレン味に欠けるというか…。

後半のノマドと西側の超巨大近未来戦車が押し寄せてくるシーンの上記のクモ頭の自己犠牲だったり、なぜか野生の猿が戦車を爆発させるボタンを押すくだりだったり、ボタンを押すと一心不乱にガシャンガシャンとダッシュして敵陣に向かって走り出して自爆するなんとも恐ろしいR2-D2みたいなロボットのシーンだったりがあって、そこは良かっただけにもっとそういう「おっ!」と思わせるシーンがあったら、観客側もテンション維持して観れると思うんだけど、それ以外はほとんどジョシュアとアルフィーの逃避行なので面白さが継続していかない。

終盤は、機械を自在にオンオフできてしまう、この世界にとっては脅威となる力を持ったアルフィーと共に単身ノマドに向かうジョシュアが自己犠牲でなんとかノマドの爆撃に成功、ノマドも墜落していく中、ついに長き戦いの終止符がうたれたことに喜ぶ人間たちやAIたちの姿や平和が訪れようとしている世界に満面の笑顔を見せるアルフィーで終わるラストは美しかっただけに惜しい、惜しいんだよなぁ…。

まぁ、観て良かったかどうかで言えば、確実に観る価値はある作品だし、今後もSF映画の系譜に刻まれるべき作品ではあると思うんだけど、個人的にはあともう一歩という感じの作品でした。
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