バートン

ザ・クリエイター/創造者のバートンのレビュー・感想・評価

ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)
4.5
SFのニュースタンダード、新たな傑作!!

「ターミネーター」シリーズから今年の新作「ミーガン」まで、AIを脅威として描く従来のAIを扱う作品とは一線を画す、
“Detroit:become human”的AI迫害もの。
少し映画とズレますが、小島秀夫監督の「Death stranding /デス・ストランディング」に似た世紀末と近未来テクノロジーの融合の美しさにひたすら酔いしれる今作。

SFではありつつも芯は親子愛であり、
何より戦争映画、世界大戦が絡む迫害、偏見、差別を色濃く描いた作品です。

「SF目が喜ぶ」感覚を得られる圧倒的な画作りですが、あくまで背景。そこに落とし込むギャレス・エドワーズ監督の描き方に脱帽します。あまり見られない、というか何気に見たことがない(僕が見てないだけでほんとは割とあるかも)な「アジア・中東文化」とSFのミックスはとても新鮮で、

例えば「タイの文化的で伝統ある寺院に溶け込むアンドロイドやテクノロジー」が来たと思えば、「織豊時代を思い出す、今もある日本の田畑で働くアンドロイド」といったアジアとSFの文化的融合の細かい描写がとても目を惹きます。こういうの大好き。

とは言っても都市部にはがっつりスターウォーズを彷彿とさせる宇宙船に飛行船。とにかくビジュアルが良すぎた新感覚SFでした。

ここまでSF SF言ってますが、 SF軸の中心にぶっ刺さっているのは擬似親子愛。
AI迫害派の西側諸国の軍人の主人公が、思えば理由も考えず本能で嫌悪していたAIたちの真実を知ります。
「彼らは平和を望んでいるだけ。」

AI反乱軍基地を爆撃する移動基地ノマド破壊の為作られた子供型のアンドロイドと出会った主人公は、とある目的でその子を利用する為軍を裏切り、放浪するのですが、
その出会いから苦しい過去に向き合いつつも、段々とその子と絆が生まれていきます。
正に「子連れ狼」や「マンダロリアン」、「Last of us/ラスト・オブ・アス」のような擬似親子ものですが、そこに留まらず、放浪する中で段々と主人公の内にある「偏見」が変わっていきます。

偏見や差別という潜在意識からくる人類永劫の課題を乗り越える瞬間を描く今作はとても貴重で、それでいて「差別をしない」ことが意外にもこれだけ単純で、それでいてその境地に辿り着くまでがどれだけ大変か、その真理をつく構成にただただ脱帽でした。

そしてラストはしっかりと親子愛の物語へと収束していく。
オールタイムベスト映画確定。
今年ベスト候補かも。



隣の人めっちゃ泣いてた。
つられて僕も泣いた
バートン

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