映像の平面性を徹底的に追求する形で、『The Star Eaters』でも見られた監視カメラの視点を横長に二分する形で全編物語るという面白い試みだった。当然そこにはフーコーのパノプティコン構造が引用され、GPSが常に私＝監視カメラの目線を中心点に設定して世界を見渡す仕組みを露わにする。隣り合う二分された映像は時間と場所が微妙に異なるものの、時に重なりあうため、カンザスの平坦な土地が二つの監視カメラ映像を通じて解体（ズレ）と再構成されていく様子を観客は近代的な眼差しでもって見つめていることに自覚的にならざるを得ない。ドローン？による空撮映像は、空と地平線の境界と融合について言及し、二つの監視カメラ映像が作り出す横長の平面性の臨界点について意識を向けさせたところで幕を閉じる。あらゆる映像は二次元の平面世界でしかあり得ず、近代は平面化した世界を捉えることで社会を創造してきた点を映像表現によって批判する点が刺激的。ただこの映画の弱みもその徹底的な平面性にあるように思える。あらゆる被写体を横の広がりで平面化させてしまう監視カメラを揺るがすような垂直方向の時間そのものの流れがもし存在していたら、カンザスに異なるレイヤーを与えられたように感じている。あらゆる空撮や浮遊していくカメラは確固とした時間を全て空間の問題に収斂させており、かろうじて縦軸になり得たかも知れぬエデンの園の建築も、「私はここにいる」というナレーションとともに空間の認識が主題化されてしまう。もしかしたらこの映画の構造自体を台無しにしてしまうかもしれないが、縦軸になり得たかもしれない被写体から「ここにいる」「私」が切り替えされるような事態が発生していたらどうだったろうと想像している。カンザスを見事に平面化させた映像が、同じ平面の表象でしかない映画とどんな境界を引き、もしくは融和してみせるのか。そこに興味を惹かれる。