ルサチマさんの映画レビュー・感想・評価

ルサチマ

ルサチマ

胴鳴り(2024年製作の映画)

4.3

今年の新作邦画では一番いい。語られている話に必然性を感じさせてくれた上に新潟ロケも、あの胴鳴りの予兆として海辺の崖を風がいっきに吹き荒ぶ瞬間を捉えているのは白眉であり、撮影場所の選択についても野心を感>>続きを読む

WALK UP(2022年製作の映画)

4.1

最近のホン・サンスではいい。ただ、近年のただの自己模倣的なズームの使用も封じてはいるが、そうなると本当に俳優の自然主義演技を記録するだけにカメラが使用されてしまう。辛うじて過去の夫婦生活の会話のやり取>>続きを読む

エグザイル/絆(2006年製作の映画)

4.1

描こうとすることは悪くないし、これまでの作品とは違う方向性を模索しようとする気概は感じるのだけど、仕上がりとしては中途半端なアート作品になってしまってる印象は否めない。ラストのスローモーションでの銃の>>続きを読む

ブレイキング・ニュース(2004年製作の映画)

4.0

冒頭から頑張って長回しをしながら銃撃戦の緊張を作ろうとしていたりはするけど、悪く言えばトーはカメラを無駄に動かしたがる癖があり、そうした趣味が作為性と結びついてしまい、撮影をする上で空間演出と結びつか>>続きを読む

城市特警(1988年製作の映画)

4.2

キャラ造形の参考になるような作品の一例。
手の痙攣と拳銃の暴発のサスペンスとしてはやはりエレベーター内での銃撃戦が白眉。
トーの中では一番アクションがスタイリッシュだとは思う。

暗戦 デッドエンド(1999年製作の映画)

4.4

トーの最高傑作かも。クサイんだけどラストにはグッと来て泣けてしまう。冒頭から無意味にカッコつけたカメラの軌道に馬鹿馬鹿しくて笑ってしまうが、バスで出会う女との距離の縮め方(サングラスをかけさせて、同じ>>続きを読む

リンダとイリナ(2023年製作の映画)

3.5

通常通りで何ら新しさもない。同録での撮影だろうが、ギヨームの同録の効果は単なる自然主義でしかなく、口をべちゃべちゃ動かして発話させた役者の語りを記録することに何の緊張感もない。具体的に言えば前半の職員>>続きを読む

若武者(2024年製作の映画)

3.0

何か意図あるようで、結局大した意味のない画面が続く撮影が小賢しい。だがこの撮影に対する意識の低さは、何度か用いられるドリー撮影を見れば明らかで、そこには移動を伴うものの、映る空間の(距離の)緊張感がな>>続きを読む

枝葉のこと(2017年製作の映画)

1.0

全然よくねぇ。。地方郊外を切り取る作家たちのナルシシズムが本当肌にあわねぇ。。

蛇の道(2024年製作の映画)

4.1

新作の『chime』に辟易していた分、期待もしてなかったが、これはそんなに悪くない。が、そこに何か新しさがあるかと言えば何もない。ただ過去作との比較で哀川翔と比べられる柴咲コウの起用については全然劣っ>>続きを読む

違国日記(2023年製作の映画)

2.0

大人の女性を撮るにあたって、少女の印象を損なうことなく、大人の女性としての魅力とともに兼ね備えた新垣結衣と夏帆を起用したのだろうが、前提となる新垣結衣の人物造形がそもそも物静かなために、どれだけ等身大>>続きを読む

走れない人の走り方(2023年製作の映画)

3.5

これも結局画面のルックは一見ちゃんとしているし、且つ編集もスムーズに、時にコミカルにやろうとしているが、それこそ最も遠ざけるべき安直さであるはずで、周囲のスタッフ含めて技術があるということを遠ざけてで>>続きを読む

恋は真っ赤に燃えて(2024年製作の映画)

3.5

板尾創路のキャスティングに驚きつつ、案の定というか板尾創路が一番いい芝居をしてる。今回取り上げられてた助成金作品では一番真面目に映画に取り組む姿勢が感じられる。つまりは、どれだけ現代的な問題を共有した>>続きを読む

勝手口の少女(2024年製作の映画)

3.0

どこで撮っても同じような映画が続く中で、今作は画面の作り方については今作が少なくとも一番まとも。冒頭、夕暮れの時間に虐待する母とその息子を最低限のカメラポジションで捉え、耐え難くなった息子が母を階段か>>続きを読む

光はどこにある(2024年製作の映画)

1.0

他の作品についても感じるがどうしてこうも自己中心的な人間が少し肯定されるような映画ばかりつくるのか。本当にどれも似た作品になってるという印象の範疇を超えないうえに、それらを作家性といえば聞こえはいいが>>続きを読む

明るいニュース(2024年製作の映画)

2.0

この作品に限らずだが、上映されたどの作品を見ても助成金を得て撮るものがルック的な見栄えにしか還元されておらず、他人の金をもとに映画を撮ることの意味を何も考えられてると思えない。カット割だとか、カメラの>>続きを読む

ニューオーダー(2020年製作の映画)

3.9

描こうとするもの自体は悪くないけど、あまりに描きこみ方がゲーム感覚すぎて、観客の恐怖を増幅させにいってるだけになってる。

ブラックライダー(1986年製作の映画)

4.2

描き方のシンプルさが潔くていい。導入部のテープを盗み出して逃走する場面の廊下のシーンなど、かなり最小限のカメラポジションでアクションを展開している(ワンカットの中でサスペンスを生み出している)が、全体>>続きを読む

チャイム(2024年製作の映画)

2.0

レンタル視聴で期待せずに見たけど、想像以上に全然よくねぇ。。やっぱ黒沢清は『cure』からずっと抜け出せてなくて縮小再生産しか出来ないんだろう。

海辺の金魚(2021年製作の映画)

1.5

本当安全圏からしか語らないというのがいかにも是枝的偽善芸で最悪。社会的弱者に寄り添うふりして、実際のところ内容的にも映画の形式的にも自分の用意した物語というか段取りを一つ一つ処理するだけで、たまに挿入>>続きを読む

みかへりの塔(1941年製作の映画)

4.8

戦中に制作された数少ない清水宏作品の一つだが、感化院を一つの国家の物語として見てみると、問題児たちを「立派な大人」=「兵士/良妻」へ育つことを正しい教育として、親は絶対だとする天皇制についての側面が競>>続きを読む

泣き濡れた春の女よ(1933年製作の映画)

5.0

北海道の炭鉱労働者を描いた物語ではあるが、実際の中心となる舞台は労働者たちが遊びに出かけるバーであり、空間と人物配置のモダンさを存分に堪能できる。見どころはいくつもあるが、やはりお浜が言葉で健二を言葉>>続きを読む

母のおもかげ(1959年製作の映画)

4.8

シネスコの画面を見事に生かした清水宏の横移動の撮影が画面の広がりを、そして室内の奥行きを強調するような固定撮影が画面の透明感というよりも寧ろ抜けの黒さを強調する。戦後の小津と同じように亡き母の存在を題>>続きを読む

赤色彗星倶楽部(2017年製作の映画)

2.0

学生映画にしては確かに技術的な努力も感じられるし、なにより瑞々しさがあるのはわかるんだけど、編集の繋ぎ方、撮影の仕方に根本的に作り手の自己愛ばかりが目について好きになれない。技術だけ濫用して本来描くべ>>続きを読む

おてんとうさまがほしい(1995年製作の映画)

4.2

演出家の不在によって成し遂げられた撮影と編集。採れたての野菜であるかのような画面の素材は確かに見応えがあるし、それが次第に撮(採)れなくなっていく過程に緊張感を覚えもする。ただこの映画のベストショット>>続きを読む

ヒノサト(2002年製作の映画)

3.8

これも結局のところ、佐藤真的な時間と空間の切り取り方を優等生的に成し遂げているというくらいで、個人史と街の景色を重ね合わせてはいるけど、それも結局のところ身の回りのものに丁寧な目線を働かせてはいるとい>>続きを読む

Oasis(2022年製作の映画)

2.0

これならブラタモリ見てる方が面白いだろ。。ささやかではあれど豊かな暮らしを切り取るということを良しとする最近のサブカル的な流れに押し付けがましさすら感じる。

地獄(1979年製作の映画)

4.7

神代と特撮の組み合わせというと、『恐怖劇場アンバランス』を思い出すが(実際こちらにも砂丘が事実上クライマックスに設定され、間接的にではあれど死者との応接を成す場となる)、こちらはよりケレン味を帯びてお>>続きを読む

反撃/真夜中の処刑ゲーム(1983年製作の映画)

4.3

本当にまんま『要塞警察』なんだけど、少なくとも今見るとカーペンター以上に現代的な問題も組み込まれており、結構痺れる。

ラジオ下神白―あのとき あのまちの音楽から いまここへ(2023年製作の映画)

3.0

ドキュメンタリーそのものに元々胡散臭さを感じているが、この映画も例外ではなく、被写体とそれなりに丁寧な関係は気づいた上で撮影はしているんだろうが結局のところカメラの後ろからは何もリスクを負おうとしてい>>続きを読む

『シチリア!』撮影開始(2001年製作の映画)

4.7

久しぶりの再見。
ストローブ=ユイレの厳格なコンポジションの設計を映しながら、このメイキング自体はどちらかというと突然のブレッソンの引用を編集に取り入れたり、各章分けのテロップだったり、やはりストロー
>>続きを読む

私は死んでいない(2008年製作の映画)

4.3

技術面で視覚的にも聴覚的にもこれはたしかに見応えはあるが、しかし愛についての物語(母子関係含む)を3つの章に分けて描くとはいえ、これはもっと単純な話として描けただろうし、事実クライマックスになり得る場>>続きを読む

Outside Noise(原題)(2021年製作の映画)

4.0

こちらは最早ロメール的な範疇にある手法と題材の選び方に留まっていて、明らかに一般的なものに媚びているのが面白くない。

Classical Period(原題)(2018年製作の映画)

4.7

一見緩く見える画面ではあるが、ダンテ『神曲』の議論のシーンでテーブルを囲う男女の学生をデクパージュする際に人物の顔向きと細かく空間を細部化したカメラポジションが位置関係の把握を困難にしつつ、しかしそれ>>続きを読む

悪は存在しない(2023年製作の映画)

2.0

濱口が描くのは結局のところ都会の人間であって、田舎の生活にはなんの興味もないんだろう。勿体ぶって生活を長回しで捉えてはいるが、そういうことではなく、根本的な問題として田舎暮らしの娘について何も煮詰めら>>続きを読む

静かに燃えて(2022年製作の映画)

4.1

このレビューはネタバレを含みます

傑作とは思わないが、リビングの部屋の壁に閉じ込められた世代を超えた物語を解きほぐしていくような語り口は確かに見応えがある。限られた撮影体制ゆえ、貧しい画面であるからこそ、映画の中心を担うリビングの空間>>続きを読む