ルサチマさんの映画レビュー・感想・評価

ルサチマ

ルサチマ

ジャン=リュック・ゴダール/遺言 奇妙な戦争(2023年製作の映画)

4.9

ムレが評した「ゴダールはピカソ的な作家だ」という言葉を想起しつつ、あらゆる引用が散りばめられつつ、絵画を映画にすることに拘った人の答えだったのかなという気がしている。図、素材、音、台紙といったものの関>>続きを読む

瞳をとじて(2023年製作の映画)

4.7

狂ってしまったかつての出演者を探す物語ではあるが、何か奇妙な違和感がある。映画的な解釈をしようとすれば、映画監督とかつての出演者が通じ合う場面として、海軍時代に学んだロープの結び方を共有し、若き二人を>>続きを読む

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

3.9

死者に対する敬意があるようでいて、あくまで映画の中のイメージに置き換えてるだけじゃないか…。動かしようのないものを物語に取り込む覚悟は本当にあるのかという問いを立てれば、少なくともこの映画の中でそのよ>>続きを読む

ふたりの長距離ランナーの孤独(1966年製作の映画)

4.4

64年の東京オリンピックでのランナーに紛れ込んで並走した男が捉えられるまでを捉えたたった一つの映像を反復するというジェイコブス的な手法をこの時代に既に日本の記録映画の作家がやっていたことに驚愕。野田真>>続きを読む

見ての通り(物の見え方)(1986年製作の映画)

4.6

異なる2つのイメージの形式上の類似性、仕事道具と戦争で使用される武器、民間のものに紛れ込む戦争道具と戦争道具の中に紛れ込む民間のものを比較する形でモンタージュする。表面的なはたらきとあらゆるイメージの>>続きを読む

消せない火(燃え尽きない火焔)(1969年製作の映画)

5.0

学生時代に最も影響受けた映画の一つ。ファロッキ自身がカメラの前に立ち、ベトナムで使用されたナパーム弾の威力についての調書を読み上げ、「ナパームの火傷について見せようとすれば皆さんは目を瞑るだろう。映像>>続きを読む

最後に残るもの(2023年製作の映画)

4.7

恵比寿映像祭にて。ストラトマンは現代の女性作家で最も注目してる存在であると同時に蓮實以降の流れにある狭義の「アメリカ映画」とは異なる流れの(ストローブを経由したフェントらに連なる)アメリカの映画作家で>>続きを読む

ふつうの家(2000年製作の映画)

4.3

被差別部落に生まれ育った両親の話を幼い頃から聞いて育った監督が、家の中で部落問題について議論することを禁じるという一見『お早よう』的な小さな親への反逆の物語かと思いきや、そんな簡単な話ではない。子供心>>続きを読む

チーズとうじ虫(2005年製作の映画)

4.6

撮ることの倫理の思考を誘うという意味で佐藤真以降のドキュメンタリーで非常に貴重。この監督は撮影以上に生活を最上位にいるのだろうし、監督の「撮影してると手伝えないね」の一言がこの映画そのものの成り立ちを>>続きを読む

叛軍No.4(1972年製作の映画)

5.0

『叛軍』シリーズ一挙上映にて。
「NO.1」と「NO.2」では意図的に小西誠が起こした叛軍事件の原因が語られていない。

「NO.1」では冒頭に新潟の裁判所を舞台にした記録が始まるということがかなり聞
>>続きを読む

時は止まりぬ(1959年製作の映画)

4.5

雪山に設計されたダムに加えて、何より教会が建っていることが、いかにも西洋の手の加え方だと思う。日本人はどうしても自然と調和する方向でしか思考できないというのが思想的に染み付いていて、それゆえに文明を持>>続きを読む

セインツ -約束の果て-(2013年製作の映画)

4.0

最近はあまり好きじゃない現代の映画を見直して何がハマらない要因なのか考えてるけど、ロウリーをはじめとして俺はやっぱ映画オタクの作るものに何も興味がないなというのは確信が持てた。

ショーイング・アップ(2023年製作の映画)

4.3

『ファースト・カウ』より描くものに好感が持てる。アーティストの肩書に甘えて日常生活での気配りのない者に対しての軽蔑がきちんと描き込まれている。芸術を生活(もしくは大文字の政治)と切り離すことのできない>>続きを読む

秋刀魚の味 デジタル修復版(1962年製作の映画)

5.0

録画してたBS放送を正月の祖父母の家で鑑賞。もう何度も見てるけど少なくとも自分が知る限りこれほど強烈な異化効果がなされる映画はない。『東京暮色』と共に、黒々としたブラックホールとして『東京物語』を語り>>続きを読む

東京暮色 4Kデジタル修復版(1957年製作の映画)

5.0

『東京暮色』と『お早よう』はムルナウの描いた都市を最も見事な形で日本の風土に翻訳したものじゃないかと思っている。外観がなく、路地を除けばほとんど建物の全景を撮らない小津だが、部屋の室内から窓外の世界が>>続きを読む

マッチ売りの少女(1928年製作の映画)

5.0

27歳の誕生日なので『河』、『のらくら兵』、『十字路の夜』と並ぶ最も美しいルノワールを再見。トリック撮影の幻想的世界が目を引くが、ルノワールはあくまで死にゆく少女の最後の夢を描く作家で、ルノワールのフ>>続きを読む

慰めようのない者(2011年製作の映画)

4.6

八つ裂きされる手前の吟遊詩人オルフェとの会話。これはやや視線劇的に読み取れてしまう気がして、やはりストローブの分裂の気配を感じたりする。

アルテミスの膝(2007年製作の映画)

4.8

縦構図で人物を捉える場合の切り返しとして、人物の背景に周りグループショットとして捉えるということは様々な映画でありふれているが、この映画では最早縦構図の状態のみが示され、対話する人物の顔は単独のクロー>>続きを読む

オトン(1969年製作の映画)

4.9

演者たちの極めて異様な発話、喉にそのままマイクをつけたかのような発声に気を留めてしまいがちだが、より全体を俯瞰してみると非常に調和がなされている。これは単に芝居演出上の問題で片付けてはいけない問題に思>>続きを読む

和解せず/妥協せざる人々(1965年製作の映画)

5.0

素晴らしい。初期作ゆえストローブ=ユイレの中でもかなり手法の実践が掴みやすい。物語の解体ゆえに時系列は入り乱れているが、それ故にテキストの持っている物語に潜まれる核が見事に拾われ、テキストの潜在的な力>>続きを読む

マホルカ=ムフ(1962年製作の映画)

4.7

初々しくも図太い野心が迸り、今見直すと過剰に語りすぎてる部分もあれど、その整理されすぎてなさが、クラシカルにまとまらない彼らの作品の骨格になってると思えた。

花婿、女優、そしてヒモ(1968年製作の映画)

4.8

冒頭のいかにも映画的な車道のトラベリング撮影を切断する演劇的な舞台構造の導入。弁証法的な手法を取り入れつつも、カタルシスを誘うことは周到に避け、寧ろ構造そのものを露呈することで、フレームを通して世界を>>続きを読む

ミッシェル・ド・モンテーニュのある話(2013年製作の映画)

4.7

ユイレの死後のストローブにはどこか分裂している気配を感じるのだが、今作は特にその傾向が強いような気がする。ソクラテスの「自己」についての思考を踏まえつつ、自己について語ることの困難さを一つの主題として>>続きを読む

労働者たち、農民たち(2000年製作の映画)

5.0

大学時代に見て以来の再見。やはりストローブ=ユイレの演出の一つの到達点でないかと思う。イタリア終戦直後の冬での農民vs労働者の対立を前半に、後半に多様な人物の視点から反復しつつ物語が提示されるのだが、>>続きを読む

ヨーロッパ2005年、10月27日(2006年製作の映画)

4.6

ストローブ=ユイレの初DV作品だが、2005年10月27日にアフリカ系移民の若者が警察に追われて感電死した事件を経て、フィルムへ拘り続けていたはずのストローブ=ユイレがDVを手にした意味を見出すならば>>続きを読む

野望の果て(1947年製作の映画)

4.6

これほど即物的な左翼演劇的芝居で金の亡者たちの堕ちいく物語を赤狩り時代のハリウッドで、しかもノワールで描いていくのだからウルマーの野心と挑発的身振りは本当に恐れ入る。同時代的な風俗に目もくれず、確信犯>>続きを読む

騎馬試合(1928年製作の映画)

5.0

政治、宗教、個人の対立と調和がこれほど見事に描き込まれた作品は貴重。ロジェ卿とイザベルの最初のパーティ内での別れと、王妃の元へ一人向かうロングショットからこの映画の中での女性たちが政治の元に個人として>>続きを読む

たのしい知識(1969年製作の映画)

4.7

この映画の暗闇の中で聞こえてくる/見えてくる言葉/芝居を、自作で少しだけ違う形に応用して撮れていたとしたら、それだけで満足できるが、なかなか難しい。

義父養父(2023年製作の映画)

2.0

撮影だけしっかりしてるけど、中身が全然ないんだよなぁ。あの海辺に向かうこと自体に必然性は感じないし、それはまぁ譲ったとしてあの海を見た後に何を予告するのか、というところまできちんと示さなきゃいけないだ>>続きを読む

彼方のうた(2023年製作の映画)

3.0

現代の日本映画を見にいくと、余白を過剰に取り扱いすぎてるというか、本来の「間」や「余白」というのとも違う余剰の効果を期待しすぎてるんじゃないかという気がする。企画というか、問いの立て方の段階で何か間違>>続きを読む

ファースト・カウ(2019年製作の映画)

4.2

当然悪くはないんだが、いい撮影であること以外に然程驚きはない。これなら『ミークス・カットオフ』の方が全然よかった。
個人的にはライカートに盛り上がるのもいいけど、アメリカのインディペンデント系の女性作
>>続きを読む

サムサラ(2023年製作の映画)

4.5

第一部のラオス編と第二部のタンザニア編の間に位置する瞑想の光については正直想定内というか、第一部の流れから予想できてしまったのでこれに何か面白さは感じなかったのだが、第二部で舞台が丸々代わり(カメラマ>>続きを読む

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

4.4

主人公の生活の反復を綺麗に描きすぎという批判は確かにあり得るが、役所広司が自身の生活をあのように美しく見つめ、美しく彩ろうとすることが何より貴重な視点であって、そこには誰かに構ってほしい甘えはない。む>>続きを読む

枯れ葉(2023年製作の映画)

4.2

もちろん今年の新作の中では全然いいのは認めつつ、描く世界がわかりやすく現代ナイズドされすぎてる気がして、もっと行けるんじゃないかという思いは否めない。ウクライナを出すなら、死と再生をもっと(アイロニー>>続きを読む

暴風の処女(1933年製作の映画)

4.8

フォークナーの原作からはかなり改変されてるが、惨劇が繰り広げられる暴風雨に晒される一軒家の描き込みはムルナウをどうしても想起する陰惨さで、貴重なプレコード期ゆえの女性の下着姿と、その彼女へ暴力を振るう>>続きを読む

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