井出弐等兵

怪物の木こりの井出弐等兵のレビュー・感想・評価

怪物の木こり(2023年製作の映画)
2.0
この世の中には、映像化に向いている作品と向いていない作品がある。

読者の想像力によってディティールが補完される小説に比べて、
想像力を頼れない映像作品は、小説とは違うリアリティーが求められる。

2019年に「このミステリーがすごい!大賞」の大賞を受賞したミステリーの映画化。
サイコパスと「脳チップ」を巡るこの物語は、映像化した途端に、
荒唐無稽で現実味がなくなってしまう事で、キャラクターに感情移入が出来ず、その結果、肝心の人間ドラマも陳腐なものとなってしまった。

何より本作は、脚本がきちんと表現できていなかったように思える。
きっと小説では補完できていたのかもしれない。しかし、映像作品においてはそうはいかない。

ただし、作品によっては、監督の作家性や勢いで押し切れる場合がある。
しかしながら、まるでロボットのように淡々と作品を生み出す職人監督になってしまった三池 崇史による、作品全体に感じる「熱のなさ」のため、「藁の楯」や「初恋」のようなミラクルが起きる事もなかった…。

亀梨 和也や染谷将太、中村獅童や菜々緒など、役者陣の演技はそれなりに良かった事と、きっと文字で読んだらきっと面白いんだろうなと思わせるほどの魅力を感じる物語なだけに、
全体的な中途半端さと相まって、「これならもうちょっと出来ただろ」と思えてしまう、なんとも残念な作品であった…