おかちゃん

パッチギ!のおかちゃんのレビュー・感想・評価

パッチギ!(2004年製作の映画)
3.5
本作品は、井筒監督というよりは雑誌・文化クリエイター松山猛氏の学生時代の逸話を映画化したという印象が強い。その為映像作品としてみると画的仕掛はなく、忠実に氏の意向に合わせてあるようだ。暴力シーンも井筒にしては控えめで、バイオレンスを期待すると外す気がする。
 しかし、それに余りある十代の頃の怒りや焦燥感、甘酸っぱい恋心や性に対する好奇心など誰もが(?)経験する青春ムービーに仕上がっている。そして、それが一番要の部分だが、こんな普通の庶民生活の上にも嫌がおうにも国という制度で覆われている。
 その幾つかの出来事を、最後の巻く引きで昇華させるのは、流石ロマンポルノ出身の井筒だと思った。
フォークルの名曲を軸にスッ惚けたオダギリといい🤩、地方局の冴えないデレクタ大友🤭といい、いい歳なのに珍しく泣けて泣けてしょうがなかった。

もう少し強調しておきたいのは、当時の風俗を交え、あの頃のアングラ・カルチャー草創期の雰囲気を醸し出している点だ。このMovementは、当時こんな牧歌的雰囲気を纏いながら、でも時代の緊張感に晒されていた。なので、刃傷沙汰も真摯に対峙していた時代だった。今の時代のように薄笑いしながら人を殺める価値観ではなかった。そんな事を、今の方々に理解しろといったて限界あるのは、承知してる。けれども、何故か真剣に熱くて、でもどこか牧歌的な時代にこういう事があった、という事は言っておきたかった。そういう立ち位置の作品だ。
まー、過ぎ去った昭和を懐かしむオヤジの映画ではあるが…(苦笑)。