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さよなら ほやマンのmizuのレビュー・感想・評価

さよなら ほやマン(2023年製作の映画)
4.8
・劇場で涙をぼろぼろ流しながら、鑑賞した。映画って本当に素晴らしいですね……。

・津波で海にさらわれた両親は、あの日から帰ってこない。その日以来、海の幸を食べられなくなった兄弟のもとに、東京から明らかに訳ありな女が転がり込んできて…、という話。望むと望まないとにかかわらず、誰もが”ほや”であり、あの島の人々なのかもしれない。望んでいないのに気づいたらたくさんのものを背負っている。私たちは、いつもどこにも行けない。

・生きていくことは、そうしたものから逃げることでも、おしつぶされてしまうことでもない。ずっとおろせないまま、それでも背負って歩いていくだけ。もしかしたら、誰かになにかを背負わせたりもするかもしれない。でも、ある一瞬でもいいから、人と人がつながることができたなら、相手が何を背負っているのかを知りあうことができたなら。荷物はおろせないけれど、すっと軽く感じる瞬間がくるかもしれない。そういう話を、脚本、役者が一丸となって真摯に描く映画は素晴らしいに決まっている。

・映画の終盤、本当に泣きっぱなしだった。立ち直ることは、だれにとっても難しい。辛くて苦しいときに、なにか、よすがにしていたものを手放すのは恐ろしい。ただ、主演のアフロくんがどこまでもまっすぐだ。訣別をしても、さよならをしても、きっと君たちなら大丈夫。あたたかい涙でいっぱいになって、いい映画をみたなあ、としみじみ思った。大傑作です。
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