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突入せよ!「あさま山荘」事件のGOのレビュー・感想・評価

3.7
前例のない困難な状況に立ち向かった、警察官たちにスポットを当てた秀作

・犯人を1人も殺さない
・警察側から殉職者を出さない
・銃火器の使用は原則禁止

というまさにインポッシブルなミッションを課せられた警察官たちが、寒さに震えながら試行錯誤して任務を遂行する姿には胸が熱くなる

同時に警察内部の事情も克明に描かれており、指揮系統を巡る警視庁と長野県警の対立や、ガチガチの階級社会である警察組織のしがらみなども非常にリアルだ

この作品に対して、「警察が正しいという描き方は間違っている」「警察側の視点でしか語られず、犯人側のの心情描写に欠ける」というような意見を見かけたが、非常にバカげた話だ

まず、無関係の一般人を巻き込み、何人もの命を奪っている時点で、犯人たちは完全に間違っているし、完全なる悪である
そこには正しさなどないし、彼らに同情の余地などない
さらに本作は実際に陣頭指揮を執った、元警察官僚の佐々淳行氏のノンフィクションが原作であるから、警察側の視点で描かれるのも当たり前の話だ
しかも犯人側の視点が一切ないことで、銃口だけしか見せない、物言わぬ彼らの姿が際立ち、当時の現場の緊迫感がより伝わってきた

劇中でも言及される通り、「竹刀なしで剣道の試合に引っ張り出された」警察官たちの戦いを淡々と描く、ドキュメンタリーに近い作品であるから、そこにイデオロギーを持ち込んで批判するのはナンセンスだと思う

もちろん、この監督のクセである、説明不足でいろいろ中途半端という欠点は散見され、ツッコミどころも多々ある
(監督の息子の棒読みが酷い)

しかし昭和の大事件を、組織論や危機管理の観点から描いた画期的な作品として、私は評価する
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