みむさん

リアリティのみむさんのレビュー・感想・評価

リアリティ(2023年製作の映画)
3.8
国家機密をリークしたとして逮捕されたリアリティ・ウィナー。FBIが逮捕するまでの実際の尋問の音声記録から再現したドラマ。

最初はフレンドリーに雑談交えていてFBIってこんな風に接触してくるのかと思ったが、お互いの腹の中の探りあいを想像すると異様な緊張感に襲われる。
口調こそ柔らかいが徐々にリアリティを追い詰めていく様子が一語一句違わず再現されているから余計にそう感じる。

Reality Winner っていうのが本名なのがあまりに良くできた偶然というか。あまりに示唆的に聞こえてしまう。
そんなリアリティもSNSを楽しみポケモングッズを部屋に置いたり動物を可愛がるどこにでもいそうな普通の20代なんだけど、愛国心あり、米空軍勤務、アラブ圏の語学堪能、自国の現状を憂う一人の市民の姿も見え、それ自体は特異なことでもなくましてや悪いことではないのにFBIはなにかにつけ探ってくる(まあ、それが仕事でもあるが)。
アメリカに住んでいてアラブ系に詳しくコーランの教書(?)を持っていただけで疑惑の目で見られるというのもいまだにあることもわかる。

リアリティの場合は実際に機密保持規則に違反してるので逮捕されるのは当然だが、一方で国家の悪を告発することまでもが罪だとすると、FBIは何をもって職務を遂行するのか、国家のいいなりなのか等考えてしまう。
身近に置き換えるとまるで内部告発者とそれを揉み消そうとする企業のようだった。

国に忠誠を誓い仕えることと国民の利益のための行動、本来同じ方向であるはずが全く違う方向になってしまったのは国が正しく機能していないってことだろう。

戦争にも言えることだが、愛国心とは何かと考えてしまう話だった。

またしてもFBIのアーカイブを漁り甲斐がある話。