コマミー

リアリティのコマミーのレビュー・感想・評価

リアリティ(2023年製作の映画)
3.7
【正義だと思っていた行動】




"FBI"の"じわじわと迫り来るような尋問"がとてつもなく緊張感を誘われた作品だった。

ふとした"突発的な怒りの衝動"で"アメリカの機密事項"を手にし、それを漏洩した女性'リアリティ・ウィナー"に対するFBIの誘導尋問の様子とその"録音音声"を映像化したものだ。
彼女のこの一連の行動が巻き起こしたアメリカ中を世論の渦に沸かせた大事件なのだが、この彼女の漏洩騒動を通して、彼女の行動が「如何に軽率なのか?」…"この程度の議論で終わらせて良いのか"を観客に投げかける社会作品となっている。

私の見解としては彼女の行動は、軽率な行動である事とアメリカ政府やマスメディアがこの機密事項の全貌に関して"真剣に議論する良い機会を与えた突発的だが大きな行動"の半々として見るべきだなと感じた。彼女の行動は"スノーデン"のように"綿密な計画性を持って出た行動という訳でもない"し(本人がそう証言している)、正直これで世の中を大きく変えられる訳でもない。しかし、彼女も一応国家に忠誠を誓っている身ではあるが、彼女なりにこの国の情勢を"少しでも良くしよう"と大きく動いた事を我々は意識して観ないといけないと感じた。
同時に、この日本でもマイナンバーカードを通して行われようとしている、アメリカで着々と根付いている"監視国家"の恐ろしさをじわじわと感じさせる作品であった。知らぬ間に盗聴させられてたなんて怖すぎる…。

精神的に徐々に追い詰められてくリアリティを演じた"シドニー・スウィーニー"の表情の演技が凄すぎる。彼女はHBOとA24のドラマ「ユーフォリア」で一気に名乗りを上げた期待の若手であるし、今度のマーベルの映画「マダム・ウェブ」にも出演しているので今後も期待の女優である。

短い上映時間にも関わらず、緊張感が休む間もなく襲いかかる作品だった。日本でも本格的にこの「監視体制」が常態化してくると恐怖でしかない。正義だと感じていた行動によって、何気ない日常が壊される瞬間を目にした。
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