Paula

Sympathy for the Devil(原題)のPaulaのネタバレレビュー・内容・結末

Sympathy for the Devil(原題)(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

“I was number one on the ‘Who’s
Likely To Die’ list for 10 years. I
mean, I was really disappointed
when I fell off the list."

     - Keith Richards' "snorted
      father's ashes"より

ミック・ジャガーはルシファーの名を借りて傍観者となり、欠陥のある人という生き物を眺めている。この作品『Sympathy for the Devil』について映画も第四の壁があるために見ている側、すなわち観客は常に目の前で起こっている人の悪事をただ傍観という見守る立場以上でもそれ以下でもない事しか人は何も出来やしない。それは... 曲の最後にこんな言葉があるからなのか?
♪ What's my name...   なんてね?

オープニングのフィルム・スコアがとにかく映画を印象付けている。
この韻を踏んだような歌い方が
♪ Fears become wishes
 I hope that you hear this... etc.

ところで "NO SUBSTITUTIONS" を見たケイジ演じるジョン・ドウ (John Doe) ことThe Passenger がこんな事を言う。
Can you believe this sh*t?
Does that look right to you?
これだけを読めば何の意味かを理解するのは難しい。でも例えるならファミレスの冷凍で保存されている何時作られたのか分かんないケーキを解凍してお客さんに出すようないい加減な人かな?

それと今は死語となった「ディスコテック」でかかっていた
アリシア・ブリッヂズが歌う♪I Love The Night Life を
ニコラス・ケイジがジュークボックスから流れるアリシアの歌声とハモリながら『サタデー・ナイト・フィーバー』調で踊るあたり彼の人格破壊の演技はイカレている。

For the devil may start to envy those
who suffer too deeply and throw them
out into Heaven. 

同じような繰り返しのセリフってか⁉

You know, the Japanese say,
the more violent the death,
the higher the heaven you go.
このセリフは後でシナリオの中で効いてきます。

"ありふれたツイスト・エンディング"と吐き捨てるように言うのは簡単でもそれを簡単に片づけることのできないニコラス・ケイジという役者さん。彼は以前The Independent(イギリスのオンライン新聞)にこのように語っていた。
“I really don’t like the word actor
because for me it always implies,
‘Oh, he’s a great actor, therefore
he’s a great liar, and [great at]
lying,’” Cage said. “So with the
risk of sounding like a pretentious
a-hole, I like the word ‘thespian’
because ‘thespian’ means you’re
going into your heart.
また彼はシャーマニズムを別の角度から役者との繋がりを語っている。
「初期のシャーマン」は「村を助けるための答えを見つけるために想像力を働かせた」と役者が行うべき道と重ねている。
だからなのか?本作の撮影の前には、いくぶん出血後の血の色に近いダークなエンジがかった赤色の髪の毛とタキシードは彼が撮影前から既に準備していたと聞く...

ところで『The Hero's Journey』で知られスターウォーズに影響を与え、しかもルーカスのアドバイザー的存在だった神話学者ジョーゼフ・キャンベルのお言葉...
Joseph Campbell quote
“The psychotic drowns in the same
waters in which the mystic swims
with delight.”
(it means the mystics choose to
believe what the psychotic refuses
to. simply he don't resist the
weirdness of the thought that might
come because it's out of what he
learned.)
ニコラス・ケイジが唱えるテクニックや物を使って想像力を広げ、自分がそのキャラクターであると信じ込ませる「だまし」を用いた "nouveau shamanic acting" によるとこのキャンベルの世界観は映画『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』にも付け加えられている。

"You don't feel like you're acting,
you feel like you're being"
普通の脳タリン・リンの俳優とはアプローチの違いを"Western kabuki"となぞらえて語っていた超がつくほどのより自由人で流れに身を任せる “Thespian” に彼はなれるからだ。

I'm David Chamberlain.
-David Chamberlain
-David Chamberlain
このセリフはラストシーンに出てくる。それが意味するところは映画のタイトルとなっている『Sympathy for the Devil』が "史上最も偉大な曲" の一つと知られるストーンズの曲との共時性を色濃く反映している。そしてミック・ジャガーは
"It's a very long historical figure
– the figures of evil and figures of
good – so it is a tremendously
long trail he's made as personified
in this piece."

曲の詩では何回も繰り返されている
"Hope you guess my name"   
だから...⁉ 何回も言うけど
♪ What's my name...   なんてね?

最後に一言
映画の素晴らしいところが一つあるとするなら... 映画全体をシンボライズするBGMであり、映画のシーンを表現しているフィルム・スコアの歌詞を読み解ければ映画の内容が脳髄を蹴り上げるようにマッチしていることに気づかされてしまう。
Paula

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