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Floating Holidays フローティング・ホリデーズのginfooのレビュー・感想・評価

4.5
無機質なオフィスから日本のふるさとと呼びたくなるような田舎町へ。棚田が広がり清流が流れる美しい風景に、しょっぱなから癒される〜って気分になってしまった。ほんとに映像が生き生きとして、しかもスピード感というかリズム感というか独特のノリ、メリハリがあって、終始引き込まれっぱなし。なんでも一眼レフのカメラで撮影されているとか。は? どういうこと? って思うけど、このわくわくする映像の躍動感はだからなのか?

俳優陣も魅力的。小澤真利奈の病人離れしたこうるさい感が非常にリアルで共感できる。武田航平は救いようのないバカ男に見えて深い闇を感じさせ目が離せない。姉弟の愛憎が作品に重層的な時間軸をもたらしている。

適応障害の療養のため田舎にやってきたマシメ会社員だが、結局最後まで「東京に帰りたい(仕事したい)」と思っているところが痛々しくもそれらしい。人はそんな簡単に癒されやしないのさ。そして「仕事ってそんな大事?」という弟には「人は必ず死ぬ」という諦念がある。だからこそ彼が鯉のぼりの無数に舞う中を自転車でスイスイと走って行く次のシーンが途方もなく輝く。軽妙なようでいて、生きるとはということにしっかりと向き合っている作品なのだ。
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