裸足理論提唱者

ポッド・ジェネレーションの裸足理論提唱者のレビュー・感想・評価

ポッド・ジェネレーション(2023年製作の映画)
4.1
母親から母性が父親から父性が消失した未来。
そして“親”になる

女性の社会進出に伴う妊娠と出産という現代社会の際どいテーマを星新一のようなシニカルとユーモアに溢れた雰囲気で上手に包み込んで進行していく手際が見事すぎる。
生活感がない無機質な環境の中でも自然な要素を貪欲に求めるがあまり、人工的なもので代用している様子が滑稽で仕方ない。
しかしながら、再現された自然たちに対して、私達もギリギリ「これでも十分じゃない?」と思ってしまうところが真に恐ろしいポイントなのかもしれない。
ユーモラスなところで特に面白かったのは、受精卵鑑賞シーンと人工知能セラピーを受ける様子。
今回特に注目したいのは、男性に母性が芽生え始めるポイントである。
現代では、代理出産や養子を除いて、出産は母親となる女性本人の妊娠が必須であるのに対して、今作は「母親となる女性本人の妊娠を伴わない出産」になる。
妊娠する女性は、自分の体に起こる大きな変化から、出産前に母性が芽生えるが、父親は出産後初めて物理的な接触ができるので、父性というものがなかなか芽生えづらい。
作中でもあるように、ポッドを背負ったり抱えることで妊婦を疑似的に体験できるし、女性も全く同じ条件なので本来芽生えるはずの母性が母親から消失してしまっている。
後半になるにつれ女性にも母性のようなものが芽生えはじめ、島での出産(?)を望む当たりが急な感じもしたが、全体的によくまとまっていたと思う。
一つ一つの家電や街にある自然ポッドなんかもデザインが良く、実際にあるとこんな感じになるだろうなとイメージしやすかったのも良かった。
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