エブリデイねむろう

劇場版 ほんとにあった!呪いのビデオ100のエブリデイねむろうのレビュー・感想・評価

4.5
投稿されてきたという心霊映像を検証・紹介する心霊ドキュメンタリー。
「ほんとにあった!呪いのビデオ」(以下ほん呪)第100弾。
演出・構成:中村義洋

鑑賞日:2023年9月23日。
(手前都合により公開が遅れるため一応記載しておく)

スタッフルームに投稿されてきた映像。
ナレーション収録にきていた中村義洋はその映像に既視感を覚える。
「これ僕みたことありますね」。
こうして中村はこの映像の取材を行うことになる。

まず最初に、どうしても気になった点に触れる。
製作委員会では投稿されてきたビデオは原則として返却しない。
それはシリーズ38作目くらいで会議までしてなおNGとなった絶対領域だったはずである。
しかし本作では、投稿者からの返却希望に対してあっさり返却したらしい過去がある模様。
まず設定はしっかり統一していただきたい。

ということで、記念すべき100作目となる「ほん呪」。
結論からいうとすばらしい作品であった。
まだそんな手が残されていたのかという衝撃と、こういう構成をやってのける中村義洋というホラー監督の手腕にはひたすら敬服するしかない。

本作は従来シリーズの基本構造である"いくつかの投稿映像をオムニバスに紹介する"というスタイルではない。
内容としては最初の劇場版「ほん呪MOVIE」にちかい構成といえる。
つまり、たった一つの映像について2時間かけて取材を行なっていくというかたちになっている。

しかし本作の白眉は、「ほん呪MOVIE」の欠点に対する完璧なアンサーを提示しているところだ。
もちろん白石晃士監督の「ほん呪MOVIE」はほん呪シリーズにおいて画期的な作品ではあったが、取材メインの映像はどうしても中だるみの問題がつきまとう。
翻って本作は、取材のなかで製作委員会スタッフを襲う怪奇現象をコンスタントに紹介していくことで観客を取材映像へと引きずりこんでいく。

取材映像の演出も見事で、いかにも舞台俳優がやってます、というようなシーンがまったくない。
結果、ドキュメンタリー映像としてのリアリティがすさまじく観客は否が応でも映像の世界に没入せざるを得なくなる。
同時に、心霊YouTuerがやっているような安易な肝試し映像を「それはほん呪じゃないよ」と一蹴するシーンも白眉であろう。

藤本くんただの噛ませ犬だし、見た目も含めてどんどん夏目大一郎に似てきてるな藤本くん。

ただ、ドキュメンタリー演出もまた抑制気味。
これはおそらく近年の世相も反映していると思われるが、わざとのようなつくりもの演出がちょいちょい挟まってくる。
具体的には序盤の茶番とインターホンのシーン。
リアルドキュメンタリーを追求するならこういう演出は絶対にやるべきではないのだが、そんなことをつくり手がわかっていないはずはなく、おそらく"あえて"の演出なのだろう。
しかしそれもエンタメとしていいスパイスになっているし、わたしは普通に笑ってしまった。

老人ホームのシーンはずるいくらいおもしろい。

ジャンルがジャンルだけに万人におすすめするようなものではない。
そもそもまともな一般人がこんなものを劇場にみに行くとは思わないのだが、やはり古株の「ほん呪フリーク」としてこれは見届けるべきだと思ったし、シリーズが好きなら絶対にみて損はない傑作といえる。

中村監督お見事です!な一本。

2023ー新007