大学在学中に制作した「夢見るペトロ」で第16回田辺・弁慶映画祭の審査員特別賞と俳優賞をW受賞した田中さくら監督による短編作品は、就職の為に実家を離れた主人公が、捨てた筈の思い出と再び向き合う姿を描いていく。
大学を卒業して2年、就職が決まって実家を離れることになったショウタは、淡々と思い出の品々の断捨離を始める。
そして新居にやってきたショウタは、怪しげなパンダの着ぐるみと出会う。
その中にいたのは、別れた恋人と同じ顔をした女性で、その後、彼は不思議な体験をしていく。
誰しも「捨てたいもの」はあると思う。
壊れてしまったもの、使わなくなってしまったもの、飽きてしまったもの等の物理的なものだけでなく、忘れたいもの、捨て去りたい気持ち等もあると思う。
田中監督は、他者からすれば些細かもしれないが、本人にとって切実な悩みに寄り添い、そっと背中を押して前へ進ませようとする物語を映像詩で綴っているような気がする。
