●幸運の犬（2022年日本。ヒゲポン）

「どうか，僕のことを 忘れないで」

https://www.youtube.com/watch?v=r9sdMA7o0vs

第31回レインボー・リール東京に出展された唯一の邦画。
映像集団ちくわフィルムの総指揮で，この映画をiPhoneひとつで撮られたまちょ監督は，この映画はある人に捧げたラブレターだと舞台挨拶で語られた。

たった53分という尺。
映画としては短編という長さだが，そこに詰まっている想いは他の感動作に，決して劣ることはない。
思い切り愛に溢れたラブレターだ。

46年間彼氏がいなかったヒゲポンこと髭村。
ある日彼の前に現れたぬいぐるみと青年TEN。
恋に落ちるふたりだが，TENにはある秘密があった──という話。

アフレコはズレているし（これは意図があってのことと後に知る），演者のほとんどが演技に関しては素人。
それでもこの映画に触れたことがある人が，多かれ少なかれ涙するのは，果たしてどういう理由だろう？
直に確かめてみては？

残念ながら大スクリーンで観ることは近々は叶わないが，マイファンズで観ることは可能。
参考までにアドレスを。

https://myfans.jp/posts/a3bb4e94-32ed-410d-b71c-85df7601df6f

主演を務めたヒゲポンさんは，この後『タチェット』というこれまた泣ける作品で脚本・監督をされた。
その『タチェット』はこの『幸運の犬』と比肩する。

監督を務めた まちょ 作品、過去の映画もこの映画も、主役から小さな役にいたるまで、出てくる人出てくる人、皆が皆、活力に溢れている。
その時映ってる人物が主役な勢いが最後まで続く。

作品の主軸としているものは"優しい幸せ"。
そんな映画だから、いろんな人物がガンガン前に出て来る必要はないのでは？
と感じるかもしれない。
が、
それこそがこの作品の真骨頂で、優しさと自己主張の強さが驚くほど噛み合っている。
このあたりのバランス加減には舌を巻く。

バランスはすこぶる良いが、計算はされていない。
ある意味、勢いのみを糧に作られている。
それでもこの感覚！あぁ、なんて気持ちいいのだろう！

まちょ監督の過去作、
『クロスローズ』
『プレップマン』
もおんなじ感覚。勢いに妥協がなくブレもない。

そして『幸運の犬』
もしかして、中年男の恋愛物語だと思って、観るのを敬遠している人がいるかもしれない。
それはもったいなさすぎる！
魅せに魅せまくる登場人物全員と、中年男の奮闘が、なんと輝いていることか！

最後に、、
主人公の中年男を演じたヒゲポンさん。
このすぐ後に、今度は監督という立場で
『タチェット』
という作品を撮る。
これがもうね、、、
いや、これは別の機会に語ることとしよう。

『幸運の犬』
星5つですっ！