SHOCKER戦闘員の映画日和

月のSHOCKER戦闘員の映画日和のレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
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2023.10.21
鑑賞へ至るまでここまで足取りが重い映像作品は無い。というくらい鑑賞するべきか悩みましたが、
舞台挨拶を拝見した際に本当に様々な感情と覚悟を持って本作ヘ挑まれたという役者陣のお話しを拝聴して複雑な心境ながらどうにか鑑賞へ至りました。

2016年に起きた津久井やまゆり園殺傷事件から約7年という歳月を経て映像化。事件があった当時、私自身も神経発達障がいの診断を受けた身でしたので、

重軽度問わずこの日本という国で
-障がい者-として生きる意味と、
それをサポートする支援者の現実を改めて包み隠さず暴いていく構成は当事者やその血縁者であればあるほど居心地が悪く、何処か作り手に試されているような感覚もあり終始嫌な感情がへばり付いて来ました。
両親が介護職という事もあり高齢者のサポートという立場ながら現場の険しさは普段から聞いているので、

スタッフから入居者に対する暴行がある反面、その逆もまた事実として存在するが故に現場で働くスタッフのケア。
という点においても本作では描かれているため、植松個人の思想を持って断罪する言動そのものは決して許されるものでは無いのは大前提として、
どの業界も現場の声というのは大切にしていくべきだと本作を通じて改めて痛感させられる一方でした。

磯村勇斗さん演じるさとくんもまた現場で働くスタッフとして先輩からの圧力や障がい者と接していく中で疲弊していく様を淡々と描かれていくので、
決して気持ちの良いものではありませんが、この積み重ねがあの殺傷事件へと繋がる現実として見ると何とも言えない気持ちになります。

それでも障がいを抱える一人の人間として、それがどんなに偽善的であったとしても植松のとった行為は決して許されるべきでは無い。と改めて本作を通じて断言できると感じました。

異論はあるにせよ当事者自身が彼の声に少しでも耳を傾けてしまえばそれこそ私達の存在を意義が否定されてしまう事もまた事実である事も確かなので。

決しておすすめの出来る映像作品ではありませんが、届く人へ届く作品になる事を願います。
スコアは今回あえて伏せております。来週は同じく石井監督の「愛にイナズマ」も公開されるそうなので、鑑賞したいと思ます。