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ほかげのshironのレビュー・感想・評価

ほかげ(2023年製作の映画)
5.0
それぞれが戦争による傷や闇を抱えている…素晴らしい演技に圧倒されました!
子供の剥き出しの生命力にぶら下がる大人たち。
勝手な大人たちが始めた戦争で、子供は一番の被害者でありながら、唯一の希望でもある…本当に酷な話しです。

心をざわつかせる音楽も素晴らしい。
終盤で左後方から水のしたたる音が続いていて、同じ空間の中に閉じ込められている息苦しさを感じました。
劇場公開へのこだわりが詰まっています。

大島渚監督の『少年』を彷彿とさせる、塚尾桜雅くんが素晴らしい。
壊れた大人に囲まれて、自らが大人になるしかない。
いろんなものを見てきたと思わせる目の演技が素晴らしい。

もちろん趣里さんも素晴らしいのです。
塚本晋也監督の新作なので観る気まんまんでしたが、予告編の趣里さんを観て「これは絶対に劇場で観る!」と心に決めました。
その期待を裏切らないばかりか、更に超えてくる演技に興奮しました。
キュートなお顔立ちからは想像できない、凄む芝居の迫力に痺れます。

そして、楽しみにしていた河野宏紀さんの演技!
『J005311』の次回作を待っていたら、役者として塚本組に招かれていただなんて!
あ。そもそもが役者さんでしたね。
ものすごく振り幅の大きい役どころで、様々な魅力を堪能できました。
なんだろう、この愛おしくて抱きしめたくなる感じ。
私には1ミリも無いはずの母性が呼び起こされるような。笑
大人が子供のようで、子供が大人のような作品のなかで、圧倒的な孤独が『J005311』の山本とダブって泣けました。
若者たちの未来も全て奪う戦争。
『野火』から命からがら戻ってきても、まだ地獄は終わらないのか…
戦争のえげつなさを痛感させられました。
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