しちれゆ

ほかげのしちれゆのレビュー・感想・評価

ほかげ(2023年製作の映画)
3.8
敗戦直後のおそらく東京。崩れそうな居酒屋で身体を売って生きる女(趣里)。そこにやってきた孤児の少年。女は少年に「ずっと一緒にいてくれるわよね」と何度も念を押す。大人である女の方が10歳にも満たない少年に依存し彼を生きる縁(よすが)とする。自身の欠落を埋めてくれる唯一の存在として。
また戦場のトラウマから逃れられず上官に復讐しようとする片腕が不自由な元兵士(森山未來)。
3人に共通するのは絶望だった。けれど生き残った者たちには否応なく朝が来てしまう。死ななかったから生きている。
喧騒の闇市、暗がりにうずくまる復員兵。病に冒されていく女。銃声。生きていく少年。
これは女へのレクイエム。
少年の世の中を睨みつけていた鋭い眼差しが次第にほどけていき柔らかい笑顔になるのが救いでした。
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