そう

ほかげのそうのネタバレレビュー・内容・結末

ほかげ(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

ずっと見たいところを見せない演出がなされていて、映画ってこうやって作るんだなあと思った。ホラー映画の手法なんだろうけど、あらゆるジャンルに使える。

音楽の使い方も観客を不安にさせる。めちゃめちゃ何か出てくる風に盛り上げて何も無いとかw意地悪な感じ。

勿論キメの画はしっかり照明作ってフィックスで撮ってるんだけど、手持ちで機動力良く回してるから欲張っていろんなカット撮れたと思う。撮影も監督がやってるから文句言う人がいないし、より自由な映画制作を可能にするポイントかもしれない。その分予想外のアイデアには繋がらないとは思うけど。

先人達が戦争の事を語りたがらなかったのは何故なのかを、残された我々は考えなければならない。彼らがいう「戦争」とは戦中だけでなく戦前や戦後も含むのではないか?

劇中の森山未來のように戦後も戦争が終わってない人がいた。割り切れない思いを抱えたまま新しい時代を生きていた人々も大勢いたことだろう。森山が演じたテキ屋の男は奥崎謙三を彷彿とさせる。彼の戦争はあそこでようやく終わった?


「戦争に行って帰ってこれなかった人は怖い人になれなかったんだよ」

せめてもの救いか。

「ほかげ」とはどういう意味で何故このタイトルにしたのか後々気になった。監督がいろいろなインタビューで「祈り」の映画だと語っているので、タイトルは祈りとしても良かった気もするが、日本語で付けると何か違う。火の光とかまんま火の影という意味だが、火が戦争だとすると苛烈な戦の影(影響・暗部・裏・闇)を描いた映画ともとれるし、あるいは火は新しい時代への希望の光なのかもしれない。焼け残った居酒屋に灯る一本の蝋燭。戦争の後遺症を抱えたテキ屋の男と拳銃を御守りに独りで生きる少年が囲む焚き火。即席の家族を照らす火の光は影も生み出す。漢字で火影と表記しなかったのには意味があるだろう。
そう

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