Hinano

ナポレオンのHinanoのネタバレレビュー・内容・結末

ナポレオン(2023年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

迫力満点の戦闘シーン、美しく荘厳なフランスの建物や街並み、そしてそれらに劣らない俳優たちの演技力…こういったところは、既に多くの方が書かれているため、私は違った角度からの感想を述べてみようと思います。
※今回の感想は、やや断定的な物言いになっていますが、何も知らない、一人間の意見ですので、そのつもりで読み流してくださいませ


鑑賞から数日が経ちましたが、感想を記そうと思っても、
今日まで筆が進みませんでした。
あの約3時間ほどの中に観た彼を、彼の人生の全てだと
思うことは決して無いものの、
それでも史実に基づいた脚本、構成となっているのならば、
私は彼に、同情の気持ちを抱かざるを得ませんでした。
まさか、偉大な人物として歴史上にも名を残したあの人に、
同情の気持ちを抱くとは思っていなかったのです。
故の、拒否反応のようなものが起ったのだろうと思います。

この映画のキャッチコピーには「英雄か、悪魔か」という言葉が用いられていましたが、
それを受け、敢えてどちらかの答えを出すとすれば、
彼は悪魔だと思います。
ただそれは、人の心を持たず、ただ自分の出世のためだけに野心を燃やし、
人の人生を顧みることなく、残忍な行為に及んだからではありません。
彼は、極めて不器用で、生きるのが下手だったことが悪なのです。
それを当時本人も、少なくとも晩年には自覚していたのではと、
ホアキン・フェニックスさんの演技を観て想像しました。
彼はただ、自分が自分に与え、そして周りの人からも与えられた
プレッシャーによって、がむしゃらに人生を走ったのだと思います。
そうしたことが結果的に、愛する人を上手く愛せず、欲しくも無いものに対して
いらないと言うことができない彼の人格と人生を形成したのだと。
言ってしまえば、彼の身に起きたことは全て悪でした。

彼が真面目であったこと、一途に野心に燃えることのできる人間だったこと、
頭脳明晰であったこと、たった一人の愛する人を見つけてしまったこと、
愛する人と出世を天秤にかけてしまったこと…。
一つ一つは悪でもなんでもなく、全てが合わさって繋がることによって、
一つの大きな悪となったのです。

彼が最初に犯した過ちが、彼自身に次の過ちを犯させ、
また次へと繋がり…そしてやがて、彼の変えられない
悪魔のような人格そのものになっていったのでしょう。

人は、個々の人格を形成する過程で、同様のことを繰り返しているのでは無いのでしょうか。
誰しもが、誰かにとっての英雄で、悪魔であるのでしょう。
Hinano

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