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ナポレオンのRのネタバレレビュー・内容・結末

ナポレオン(2023年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

映画館で友人2人と。

監督は「エイリアン」シリーズのリドリー・スコット。

あらすじ

1789年、フランス革命によって、マリー・アントワネットが斬首刑に処され、国内の混乱が続く中、天才的な軍事戦略で諸外国から国を守り、皇帝にまで上り詰めた英雄ナポレオン(ホアキン・フェニックス「カモン カモン」)その生涯を描く。

最近映画館で映画を観るともれなく予告がやっていて、それに感化された戦争映画好きの友人に誘われて遅らせばせながら鑑賞。

ただ、俺自身ナポレオンのことは全くと言って良いほど知らなくて、学生の頃世界史で触れたくらい、しかもそれもうん10年前なので観る前に友人に「フランス革命」と言われて「あ、あ〜」とわかったようなわからないような感じで誤魔化したくらいなので、要は全然わかってない。

そんな状態で観たんだけど…結論から言えばイマイチでした…。

お話はあらすじの通り、英雄ナポレオンの生涯を描いた作品なわけなんだけど、まずはやはり主演のホアキンの凄さよ。「ジョーカー」から「カモン カモン」と近年の出演作は幸運にも劇場で追えてる状態なわけなんだけど(ただ次作に関しては面白さ云々の前にアリ・アスター監督作でダメージ凄そうだから劇場では観ない予定)、やはり風格がすごい。実際は低身長だったという人物像は今回はあんまり描かれてないけど(エジプトのシーンで足台に乗ってるくらい?)、肖像画で描かれてるような軍服にでっかい帽子を被っていても、それがめっちゃ似合ってるし、常に無感情そうな表情も何を考えているかわからない底知れなさに思えてくる。また、終盤の「ワーテルローの戦い」にかけてどんどん兵士が集まってくるところなんかカリスマ性もあってめちゃくちゃかっこよく思えてくる。

また、序盤で劇中では初めて大群勢の指揮をとる「トゥーロンの戦い」では、仕掛ける前に「はぁはぁ…」と落ち着かない感じも見られるなど人間らしい部分も垣間見える。

特にそれは後述する最初の奥さんジョゼフィーヌ(ヴァネッサ・カービー「ミッション:インポッシブル/デッド・レコニングPART ONE」で顕著で彼女と離婚の儀式をしてる時とか、彼女の死を知らされた時なんかに涙を流す場面ではめちゃくちゃ悲しんでて本当に彼にとってジョゼフィーヌは大事な人だったんだなぁと思い知らされる。

あと、ジョゼフィーヌ関連だと、どちらかというとそれまでの無機質な感じから「弱男」の側面も見られて、ジョゼフィーヌとの数回に渡る高速ピストン立ちバックSEXの滑稽さだったり、初対面時の「見てねぇし!」的なセリフがあって挙動不審になっちゃうなど、童貞臭さもあったなぁ笑。

で、そんなジョゼフィーヌを演じたヴァネッサ・カービー。この人はトム主演の「ミッション:インポッシブル」シリーズのホワイト・ウィドウのイメージしかなかったんだけど、名優ホアキンの相手役としても、申し分ないくらいの堂々たる演技で初めて対面した時の片パイが見えそうになるくらいの肩出しでのセクシーシーンから始まり、結婚して速攻で他の男とベッドインしちゃうなど、終始ナポレオンを翻弄するファム・ファタールっぷりもあって、いやぁめちゃくちゃ存在感があったなぁ…。

特に個人的には、最初の浮気はあったものの、その後はお互いめちゃくちゃ愛し合っていたのに結局のところ子宝に恵まれず、国の未来を思うナポレオンと離婚されることになり、お役御免と寂れたお屋敷にあてがわれるんだけど、後々、ナポレオンと政略結婚した奥さんとの間に生まれた赤ちゃん(ジョゼフィーヌのシーンはあんなにたっぷり描くのにこの奥さんとのシーンは出会って、次のシーンでは速攻で赤ちゃんが生まれているのには笑った、その後一切出てこない)を抱いての「あなたが生まれるために私がどれほどの犠牲を払ったか…」と怒りや恨みではなく、ただ思ったことを無常に口にするシーンの切なさ…。本当にどんな気持ちだったのだろう。

また、キモとなる戦争シーンは、「大砲映画」的な趣が強くて、ナポレオンの合図でドッカンドッカンと景気良く発射する砲弾で敵の兵士が盛大に吹っ飛ぶ様はダイナミック!しかも、グロ描写もわずかながらちゃんとあって、トゥーロンの戦いでナポレオンの乗った馬に砲弾が当たり、馬に穴が開いちゃうところとか、民衆を鎮圧するために放った砲弾で前列にいた生き残りのおばさんの片足が取れちゃって「あ、あ…」と慌てふためく様とかリアリティがあった。

あとナポレオンが先頭で(史実では先頭で指揮をとることはあまりなかったそう)「突撃〜!」横からの馬に乗ったショットで見せるシーンとかはまさにこの時代の雄々しさ!という感じがして、また良かった。

また、ナポレオン関連とは別に冒頭のマリー・アントワネットの処刑シーンも民衆に煽られて、様々なものを投げつけられる中、ギロチン台までゆっくり歩いて、首を固定されるまでを割とじっくり描き、斬首されるまでのアントワネットの恐怖に震える息遣いとその表情までも映し取っていて、ここはやだみが凄かったなぁ…。

ただ、まぁ印象に残ってるのはこのくらいでやっぱ158分の使い方よ。と言っても体感そこまで長さ自体は感じなくて、というのも一個一個のエピソードをそれほどパートに時間を使わず、適材適所でテンポ良く描いていくからなんだけど、そのかわり一個一個が淡白で印象に残りにくい。また、それによってナポレオンがどんな人物なのかイマイチ上記以外の面では掴みにくく、結局、謳い文句の「英雄か、悪魔か」という部分の「悪魔」という部分も、エンドロールでその華々しい戦歴の裏でめちゃくちゃ戦死者を出してるという表記が出て初めて「あぁ、なるほどー。」と思ったくらいであんまり感じなかったかなー。

あと、「天才的な軍事戦略」という部分も感じられたのは「トゥーロンの戦い」での敵の隙を狙って奇襲を仕掛けて、そのまま敵地を奪い取って大艦隊を攻め入った時と予告でも大々的に扱われていた氷上の戦いでの敵を氷上に追い込むくだりくらい。クライマックスの「ワーテルローの戦い」なんてめちゃくちゃ腕組んで考えてるかと思ったら「突撃ー」とパワープレイで凸るというノープランで全然軍師っぽいところを感じさせるシーンが無かったように感じる。

まぁ、ここら辺はナポレオンの歴史を事前にザックリ知っておけば感慨も補完されて違ったのかも知れないけど、それにしても、うーんあんまり一個一個の戦いに戦争映画としての面白さはなかったかなぁ。まぁそういう映画ではないのかもしれないけど。

あと、ワンショットくらい、1番有名なナポレオンの肖像画のあのポーズをケレン味たっぷりに撮っても良かったんじゃないかなぁ、あれあったらもっとアガってた笑。

という感じで、そもそもよくわかっていないナポレオンで、あんまり得意じゃない「歴史もの」ということもあり、個人的にはリドスコ作品という部分を念頭に置いたとしても微妙な作品となってしまいました。
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