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ママと娼婦 4Kデジタルリマスター版のtorumanのレビュー・感想・評価

4.1
「死ね!ナルシスト」

無職で口だけ達者なナルシストのアレクサンドル(ジャン=ピエール・レオ)と母性的な年上の彼女マリー(ベルナデット・ラフォン)とカフェで出会った性に自由奔放な看護士ユスターシュ(フランソワーズ・ルブラン)の三角関係を描いた3時間40分の作品。

監督・脚本・編集はジャン・ユスターシュ。長編デビューに当たる本作でカンヌ国際映画祭審査員特別賞を獲得したが、81年に43歳でピストル自殺した。

ひたすら喋るアレクサンドルは、薄っぺらでナルシストのどうしようもない男、監督の分身として観ると鼻持ちならない感じが、鑑賞の障害になりそうなのですが、"アレクサンドル"役のジャン=ピエール・レオをトリュフォー 作品の当たり役、"ドワネル"を重ねて見ると何となく許せてしまう🤣
それどころか、女性達のほっとけない感情さえ共感してしまいます。

ジャン・ユスターシュ監督を幻影として観るとイライラの3時間40分になりそうですが、"ドワネル"効果で楽しく観る事が出来ました。

とにかく会話が面白い。
濱口竜介監督作品のように、ずっと会話を聴いていられる感じ。
フランス語が堪能であれば、もっと心地良く楽しめたでしょう。

限定されたレンズと固定カメラのシンプルな撮影方法は、より会話の魅力に集中させてくれます。
アレクサンドルとユスターシュのカメラに向けての長回しの独白は其々の最大の見せ場でもあり、ぐっと惹きつけられました。

会話は軽妙ながらも、ジャン・ユスターシュ監督の思想や今後のにも関連する話題も浮かび上がり考えさせられます。
自死、サルトル、愛のあるセックス…

3時間経った辺りからの、自由奔放なアレクサンドルへの女性陣の反撃とラストの唐突な終わり方の不安定さとユーモアも独特な魅力を放ってました。

上映時間、配信の少なさ、鑑賞のハードルが高い作品でしたが、これは観る価値の高い一本でした。



-追補-
気になった点を徒然と

レストランのテーブルからの景色(田舎に通ずる駅と土の無い都会)の表現は素敵。時間経過による昼間と夜の景色のコンストラストの素晴らしさ。

選曲がバラエティーに飛んでいて心地よい
ディープパープル、会話と同じくらい雄弁なピアフの歌詞、クラシック…

3時間40分でトイレ休憩なし💦
離脱者多かったです😅
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