ロジェ最終作はヴァカンスではなく演劇の映画。演劇の映画といえば、同じジャックでもリヴェットが得意とするところ。たとえば、『アウト・ワン』や『彼女たちの舞台』。リヴェットがリハーサル風景に終始してそこに深刻な謎を埋め込むのに対して、ロジェはリハーサルのいざこざから本番のドタバタへとストレートに描いていく。とはいえ、ジャン・ルフェーブル爺様のとぼけた登場ぶりや、驚異的な台詞暗記力、はたまた地元のカジノでの一儲などと、展開は油断ならない。爺様が率いる劇団のスペイン人たちが、窮地に陥った本番で桟敷席でギターを弾いて盛り上げるなんて、胸熱。