今から40年前、監督が28歳の時に撮った作品。
　その時点でできることは全てやったという感じで、挿入される様々の映像もインパクトがある。
　資料的価値もあるだろう。震災時の朝鮮人虐殺事件を知らない人には、入門映画としても最適であろう。
　
　周囲の朝鮮人が皆殺される中、奇跡的に生き残ったホルモン焼き屋を営むソ･インスンサン（81）へのインタビューが中心になるが、当時の状況を目撃した日本人の証言者も現れ、事件の輪郭がよりはっきりと見えるようになる。
　また、荒川・旧四ツ木橋付近でソさんと日本人証言者が握手する場面では、ソさんが感極まって涙するのだが、それを見た私も感極まるのだった。
　当時も朝鮮人の扱いを酷いと思っていた日本人がいることがわかる。このように、朝鮮人と日本人が協力して、過去のジェノサイドを白日の下にさらしていくことが重要になるのである。

　途中、2カ所哀悼する場面などでジャズピアニスト板橋文夫の名曲「グッドバイ」がかかって、驚いてしまった。監督の選曲なのか？

　上映後、監督のトークがあり、この問題に関するいろんな観点からの補足説明があった。
　この問題のキーワードは①ジェノサイド②不逞鮮人③自警団④朝鮮征伐であると言う。
　また、これからの活動で重要なのは①死亡者の名簿作り②遺骨収集であるそうだ。

　その後質問が許され、私が最初に質問した。
　質：監督は「福田村事件」をご覧になったか？
　答：見ていない。
ということだったので、「福田村事件」は日本人を朝鮮人と誤認して起きた事件なので、例外的なもので、本筋ではない。震災時の虐殺を描くのであれば本筋の朝鮮人大虐殺を描くべきだ、森達也はなぜそうしなかったのか、ナチスの犯行をドイツ人が検証して反省的立場から何度も映画化するように、日本人の森が映画化すべきだったのだ、との意見を述べました。
　なお、詳細は「福田村事件」の私のレビューに書いてありますので、興味のある方はどうぞ。

　2023年10月26日、調布市文化会館たづくり8階映像シアターで見る。
　超満員で観客は120名＋α。高齢の方が多かったが、熱気は充満していた。
　おそらく、半数は在日の方ではないか？