Omizu

わたしの物語/あなたを探し求めてのOmizuのレビュー・感想・評価

3.7
【サンダンス映画祭2023 ワールドシネマ・ドキュメンタリー部門出品】
イギリスのエラ・グレンディニング監督が自らの障がいを映したセルフ・ドキュメンタリー。サンダンス映画祭やSXSW映画祭など各地の映画祭に出品されている。

生まれつき両足が短い障がいを持った監督が、自分と同じ人はいるのかと探し続ける6年間を描いている。

オンラインや取材旅行を通して自らとその周囲を描写していく。その旅路の中で、やはり歴然としてある障がい者差別も浮き彫りにする。

様々な人に会うけれど、骨延長手術というものへの考えが印象的。それを推奨する医師、実際に受けた人、子供に受けさせようか迷っている親などと向き合っていく。

その手術は3歳までに受けなければならず、本人の意思とは関係なく親が判断せざるを得ない。将来子供がどう思うか分からない以上、相当に親は責任重大だ。やったら「なぜ青春時代を犠牲にして苦痛を経験しなければならなかったのか」、やらなかったら「なぜやってくれなかったのか」と言われる可能性がある。

監督は手術否定派だが、手術を決断した親の気持ちも痛いほど分かる。ここまであの医師を悪者に仕立てなくてもいいのではとも思う。彼は彼で子供の将来を思ってやっているんだから。

また、監督の友だちの存在が興味深い。彼女は自閉症という「見えない障がい」を持っている。彼女は「見えない障がいだから、"あなたは自閉症じゃないと思う"など無責任な言葉をかけられることがある」と語っていた。それは本当によく分かる。

監督は長い旅路の果てに、自分と同じ障がいを持つ人だけではなく、彼女のような違う障がいを持つ人との関わりも大事だということに気がつく。それがこの作品をより一層深くしていると思う。
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