プロポーズの翌日に失踪した市子を探し、恋人が彼女の過去を知るサイコサスペンス×社会派スリラー
怪作としか言いようがない完成度
序盤とラストを繋げる構成・描写も素晴らしいし、徐々に市子の過去が鑑賞者に明かされる前半と彼女の過去を知り奮闘する恋人を描いた後半のバランスも良く、作品にのめり込まされる
暗い場面で鼻唄で歌うのが童謡の「虹」という前向きな曲なのも、歌詞を思い出しと状況と照らし合わせると切なさが溢れてきた
脚本もフィクションでありながらノンフィクションのようにも思えるリアリティの高さに圧倒される
社会に埋もれる"無戸籍"問題やヤングケアラーを正面から描いており、話や扱う問題は全く違えど「誰も知らない」を思い起こされ、衝撃を受けた
役者陣も全体的に巧さ、ナチュラルさが際立っており、特に杉咲花は圧倒的な演技で市子そのものだった
杉咲花だからこそ演じられるストーリーとなっていて違和感なく見られるし、何より彼女の持つ魔性な一面、苦しみ、葛藤、そして"普通"を求めるあまりの行動が痛いくらい伝わる
それぞれの複雑な感情を行間の中で読ませ想像させる間の取り方含め、細かい描写、演技のおかげで切なさとやるせなさと怖さがラストで一気に来た
1番の衝撃シーンは母親の「ありがとう」の言葉で、これこそが話の重みが如実に表されたセリフだったと思う
サスペンスとしては割と早々に全容がわかるものになっているが、それにも関わらず最後まで飽きさせずむしろのめり込ませる作品は類を見ないものと感じた
2024年初見20作品目