あえて説明しない「余白」を大切にした映画だ。
他者のことは決して完全には理解しえない。
杉田監督が映画で語らないのは、本当の意味での他者への優しい眼差しゆえのものだと感じた。
たとえ理解できないとしても、他者を思いやる心が一方通行から双方向に変わった時、映画は頂点に達する。
以外、作品の要素について分析。
「亡き王女のためのパヴァーヌ」ーーピアノの演奏後、婦人が「忘れた」という。作曲したラヴェル自体もこの曲を忘れていた。過去の哀しみは決して癒えないが忘れられるというメッセージの暗示か。
『偶然と想像』ーー第3話の台詞。この作品と同じく、無関係の女性同士の交流が救いにつながる物語。過去と向き合わなければならないと女性は本心に気づく。
「察する」ーー杉田作品の登場人物はとても察しが良い。印象的だったのは、カタ焼きそばを食べるシーンで春が雪子のために箸入れを近くに置いたシーン。