r

彼方のうたのrのレビュー・感想・評価

彼方のうた(2023年製作の映画)
4.5

カセットテープ、演技、スケッチ、卵焼き。過去をそのまま焼き回すことはできないが、その輪郭をなぞり慈しむことで静やかに癒され、自身を解放することはできる。
初めて耳にするのにまるで知っているかのような歌、その清らかさ。心の中で共になぞり口ずさむ。杉田協士監督がまたも傑作を生んだ。

杉田監督の作品って、ほんとうに冬が似合う。すがすがしい冬の空気感。
「ひかりの歌」も「春原さんのうた」も、どの劇場で観たか、その日自分がどんな服を着ていたか、忘れっぽい自分なのにちゃんと覚えているのは不思議だし素敵だ。

杉田監督のふわふわした司会の下執り行われた舞台挨拶の空気感も、作品の延長線上にあるかのような柔らかさだった。
監督とキャスト陣を前に溢れ出る感情を何とか整理し、詩的な言葉を並べる人がいて、その素直さにとても温かな心地になった。
良い映画はもれなく良い詩人を産む。
r

r