ヌゥ太エガワ

悪は存在しないのヌゥ太エガワのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
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個人的な経験に即していうと、今の僕の仕事で出くわすあらゆる欺瞞が凝縮されていて、身をつまされた、というのが正直な印象だった。補助金?地方創生?住民の利益?都会で働くものなら多くの人が同じ感情を抱くはずだろう、とも思っている。働くならせめて同じ感想を持つ人と働きたい、とも傲慢ながら思っている。その感情もまた作品内で批判的に捉えられる対象だが。。

技法的な話はあまり得意ではない、息を呑むようなカットワークに映画的解釈を見出すほどの知識も頭もない、そんな愚かな自分に嫌気がさすまで含めて、ヴィム・ヴェンダースの作品を見た時と同じ感覚だな、としか思わないのだが。しかし、未熟ながら特に言及したい箇所なのだが、何度か繰り返される森を見上げるカットワーク。これにまた個人的な経験が投影されてしまったのも事実だ。つまり幼少期に見たあの大きな木に対する畏怖であったりとか、嘘みたいに静かな森の中でぐるぐる巡る葛藤とか、そういう記憶が思い出された。作品の中で繰り返されることで、森への畏敬から内面の葛藤や不安感へ、鑑賞者をゆっくりとうながす意図があったのかもしれない。乗せられてか否か、それなりの田舎に住んでいた僕にとって、個人的な意味のあるシーンだった…

あとは服だな、ライフスタイルに根差した服こそ、見ていて気持ちいいものはないな、巧と花が着ていた青とオレンジの配色も視覚的に気持ちよかったしな。