おどろきの白鳥

悪は存在しないのおどろきの白鳥のレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
2.7
『ドライブ・マイ・カー』にあった平板なセリフ読み合わせと同じような、淡々とした会話劇。

前半は状況・環境の説明を兼ねつつの日常セリフや、林、空、湖などを重ねていき、眠気を誘発。

後半は、テントなどの道具や食事を提供するホテルみたいなキャンプ(グランピング)場を、補助金狙いで村に作ろうとする芸能事務所と、村人たちの対立構造を描く。
建築許可は県や市が出すので、当事者である町が計画を聞くのが一番最後、着工間際で、説明会を開けばアリバイ成立という今の行政の不備を指摘する内容はよかった。
『悪は存在しない』というタイトルだが、グランピング場開発を企む、芸能事務所の社長とコンサルの二人には明らかな悪意てんこ盛りで、タイトルに偽りがないかどうなのよと思いつつ。

主人公・巧の唐突な最後の行動には、たしかに悪意は存在しなさそうなものの……ちょっと理解しがたく。
前向きに考えたら、考えるな感じろなA24系の亜種で、観る人間に意味を感じさせようとする意図があるのかもしれません。

しかし、私には驚かせるための意外性しか考えていないような、投げっぱなしの脚本に思えました。
なんで銀獅子賞だったんだろ?と思うくらい、尻切れ蜻蛉。
「わかりにくいことが芸術性」というなら、私は芸術がわからない人でいいです。