なかおなかお

悪は存在しないのなかおなかおのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
5.0
覚えている範囲で流れを追う。Evil exist からのdose notの表示。森を下から眺めるショットに音楽これが数分間続く。音楽がピタッと止まりいきなり女の子のショット。青いダウンとビーニーの顔、ここまでのタイトルからの一連の流れ、そして美しすぎる女の子のショットにすでにここで涙が止まらない。ここから水汲、薪のシーン。薪を割ったあとのログハウス(扉の模様がなにか感じさせるね)のある程度の時間続くショット。ここも美しい。セリフはあるものの最低限で。ドライブマイカーを思い出させる食卓のシーン。この(ある意味アーティスティックな?)雰囲気が、全体の1/3弱くらい。花ちゃんとグランピング話し合いの切り替わり。ここからは映画の雰囲気がかわる。話し合いはグランピング会社側が露悪的に映されるものの、その後のグランピング側の実情さらには車の中での内実が分かる描写、あ、こんなにここに時間を使うんだという感じ(ここはめっちゃ笑える)。去年見た映画怪物を思わせるような視点の変化で、悪は存在しないというタイトルを思い出させる。(ただ上映前から決めていたがこのタイトルの意味をこういうそのままの意味に求めるのはやめておこうと思ってたからタイトルの悪についてはまだ保留)。話し合いの中で上流から下流へ流れる水という、この映画のテーマ?(に繋がるのもの)が明確に提示される。(この後、絵に描かれた上流下流と実際に川の映像が映し出される)、この後その上流下流に託された役割を探そうと思って映画を見たが差し当たり見当たらず。その後グランピング側があまりにも人工的な赤いダウンを着て山にやってくる(この時点で絶対に山とは相容れないんだろうなとは思う)。案の定うどん屋に行き、水を汲みにいく。水を汲んだ後、川から上がり3人を写すショット、ここで涙した。なんでだろう、3人の全て伝わる、立位置というか距離感というか服にも何か感じさせるものはあったんだけど、3人で水を運ぶここのシーンは印象的。シカの生態の話が語られ、ここからは花ちゃんの行方不明に物語は移る。夜の中懐中電灯のシーンは少しやりすぎだと思った、もう少しライト数減らして欲しいかも。ここは物語の展開的に絶対匠が見つけないといけないが、やはり見つけたのは匠。靄がかった素晴らしい背景の広がる原っぱにでると花ちゃん。二匹の手負いのシカが振り向く。意図された素晴らしい背景の前でのこのシーン、から最後まで号泣してたからあまりストーリー追えていないがとにかく背景が素晴らしかった。物語の流れと服装からグランピング男はどこかのタイミングでこの山から追い出されないといけないがここで匠に絞められる。(個人的に数秒かけて倒れるシーンはいらなかった、絞められ即退場で花ちゃんと匠のシーンに集中して欲しかった、というか美しすぎ号泣モードに入ってたから、正直、物語には絶対必要なんだけど締めるシーンが不要に思えてしまうほど、シカの生命力と血、花、背景に感動していた。)ここからは冒頭と同じ音楽、同じ構図で終了。

すすき、樹木、空などの3色の層のロングショットが目立つ。さらに車や花ちゃんなどににより、差異が生まれ何度もやられそうになった。非常に美しい。最後のシーンはさらにここに靄がかかり、背景だけで涙する。

川が流れる上から下
なんだろね、テーマだと割とわかりやすく提示されていたんだけど一回見ただけだとよくわからなかった。

車シーンの撮り方
いろんな撮り方してたが、目立ったのは車の後ろを取るような撮り方。最初から最後まで何度も使用されていた。ドライブマイカーでなんか新しく思いついたのかなとか思った。


今回結構色に注目していた。花匠親子は青で統一。特に花ちゃんの全身青に黄色手袋が鳥肌立つほどそこだ!っていう感じのスタイリング、ずっと見ていたい。2人とも山に調和する色というのかな、完璧だった。グランピング男は死ぬほどわかりやすく赤く人工的。ただ、中に着ていたシャツが青でニットが紫でここら辺も意味ありそうだなとは思う。グランピング女はしたがデニムで青く、まだ希望がありそうだなという感じ(実際、歩み寄る姿勢は女の方が見せていた)。ただ、うどん屋で出されたコップの色が匠だけ青で他は緑であったのでおそらくうまくいかないのだろうなという感じ。

シカ
美しかった。最初と死骸2回?と最後に映し出される。山としての象徴か。最後花ちゃんが倒れるのはアニミズム的な観点だと、グランピングによる生贄?考えすぎか。

全てのシーン、ショット、セリフ、色、石橋英子の作る音楽が気持ちいい。美し泣き何度しただろう。今年入って濱口竜介、三宅唱、最高の映画ありがとうという感じでした。