今年1番の衝撃作であることは間違いない。
長回しのカットと美しい音楽が印象的な本作は、あらすじであるような田舎vs都会と言った構造以上に奥深いテーマを描いている。
冒頭から自然と美しい音楽、印象的なタイトルの出方により、すぐに映画に引き込まれる。そして何よりスクリーン全体に広がる自然と、それと共存する人間の姿を長回しで写し続けるカットには心が浄化されていくような印象を受けた。
※以下ストーリーに触れながらのレビュー
そんな自然の美しさを堪能していると、中盤から芸能事務所によるグランピング場建設の話が上がる。
「都会のよそ者2人」を含めた住民会議のシーンでは、田舎vs都会という明らかな対立構造が描かれるが、本作では「地域住民」のみならず、芸能事務所の2人にまで焦点が当たり、彼らにも感情移入ができるようになる。
本作でも特に印象的なのが、2人が東京から長野へ移動するシーンだ。リアルな会話劇から深まる2人の過去、都会で疲弊した生活、グランピングなんて興味はない。などのセリフにどんどんと引き込まれてしまった。
主人公と一緒に自然に踏み込み、そして理解しようとする2人。会話が少なく、「自然」と「主人公」が美しく描かれていた前半と雰囲気が変わり、会話劇も多い少しコミカルな映画として生まれ変わる。
この構造の変化がとても面白く新鮮であった。いわゆる芸術系映画として進んでいた前半部分では観る人を選ぶような作品であると感じたが、中盤から後半にかけては割と大衆向け映画のように変化する。
そして終盤になると映画のトーンがまた一気に変わる。
カウンターパンチを喰わらされるようなラストの展開により、田舎vs都会ではない新たな対立構造について考えることになる。
秀逸な脚本と美しいロケーション。引き立てる音楽と静寂。上映館が少ない作品ではあるが、ぜひともこの衝撃作を体験して欲しい。
