ft0129

悪は存在しないのft0129のレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.0
「UDON」という四国のうどんにフォーカスを当てた人情作品があった。本作で映し出されたうどんの調理過程の数秒で素朴な美味しさが伝わってきて、その数秒で上映時間2時間の「UDON」を軽く凌駕していた。

というどうでもいい点はさておき、観終わった後の余韻に浸る感覚が異常だった。余韻の湯船にひたひたと浸かった感じで映画館を後にした。とても希少な作品を観たと思った。予告編があれほど緩急のない映像だったのは、本作に目立ったシーンや急展開が特に無かったからだと納得した。

グランピングを推し進める会社員2名と、地元住民との水質を巡る対立がストーリーの軸となっている。元々開拓地であり、土地を汚しながら順応してきた自覚があるため、絶対にグランピングに反対しない地元住民からは「悪は存在しない」。そして、説明会を通じて会社員2名が地元への理解を深めつつも、会社では事業を推し進めたい社長との板挟みとなり、車内での会社への愚痴からの世間話を通じて、会社員2名からも「悪は存在しない」と感じる。

ラストのリアネイキッドチョークは、マネージャーを身代わりにせず、マネージャーを手負いの母鹿から守るために、娘をも投げ打った行為だった。結果、悪意なく純粋に鹿に近寄った娘は大怪我を負ったが、このシーンに関わる全ての人・動物・要因からもまさしく「悪は存在しない」だった。
ft0129

ft0129