濃いお茶

悪は存在しないの濃いお茶のレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
3.8
ル・シネマ渋谷宮下にて鑑賞。全体的な撮り方と音楽の使い方と会話劇の巧妙さが光る。ストーリーはシンプルに抑え、キャラクターはデフォルメして分かりやすく特徴づけ、あえて物語には空白を作ることで観客の興味を最後まで惹かせ続けるという濱口竜介監督の映画作りにおける技術力の高さが垣間見える一作。

濱口監督の映画は初めて観たが評価される理由がこれだけでもよく分かる映画になっている。
また、道徳の授業で見せて感想文を書かせるのに良さそうな映画である。
かなり野暮だが裏タイトルをつけるなら『馬鹿につける薬はない』だろうか。

一番好きなのはあの長めのオープニングでゆっくりと時間をかけて音楽と映像で作品の世界に誘われるのがたまらなく素晴らしい。「映画の醍醐味の一つはこれである」とはっきり言い切れるものになっている。

作中でタバコが一つのアイテムになっているが、その使い方も映画の中でうまく機能している。高橋が車に乗る時に慌てて地面に押し付けて火を消して、吸い殻をそのままにするのは極めて人間的な描写であり、この高橋という人物の未熟さが際立つ良い演出になっている。

余談だが序盤部分15-20分くらい、ビニール袋をガサガサし続ける客がいて、その無神経さにチョークスリーパーかけられた方がいいのではと思うくらいであった。やめてほしい。
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