『悪は存在しない』というタイトルがこれをサスペンスにしている。悪が存在しないとすれば、では何があるのか。Nature？
鹿に仮託された巧のラストの行動はnaturalであるというふうに読み取った。カメラの切り返しで鮮やかに描写されていてめちゃくちゃクールだったが、あれは一見不条理にみえるものに道理を与えすぎている、という気もする。
これは今の自分の創作物への態度の問題で、あらゆるものを物語化することへの反抗意識があって、そのせいかもしれない。全員が魅力のある人間だったがゆえに余計そう感じたのかも。
いずれにしても偶然に期待するようなセッション性と計算づくの精緻さが同居しているというのは凄い。映画作家としてどんどん次のステージに進んでいるのを感じる
