内容的には単純明快で特にひねりはなく、しかも全くコネもない素人がニューヨークにあるジュリア・ロバーツの映画製作会社(Red Om Filmsという実在する会社)にアポ無しで突撃するなんていう「進め!電波少年」を思い出させるようなストーリーだと聞けば、陳腐な映画だと一笑に付されてしまうだろう。でも実際に見てみると、とてもキュートでユーモアに溢れる作品で、青春時代がとうの昔である私のような中年には甘酸っぱくて希望に満ちた青春時代を思い起こさせてくれるし、若い人々には自分を信じて前向きに生きる勇気を与えてくれる、とても素敵な映画である。日本では未公開であるが、ジュリア・ロバーツの出演作へのオマージュ(個人的に気に入っているのは、小学校の仮装イベントで娼婦の姿をしているアレックスがジュリア・ロバーツ(が演じた役)に扮していると答える場面)があったり、ニューヨークのシーンではSATCネタ(一般的な観光ツアーに参加するつもりが間違ってSATCツアーのバスに乗ってしまい、ロケ地を巡ることになる)が出てきたりと、日本でもポピュラーな映画やドラマが小ネタとして使われているので、ぜひ何らかの形で日本でも公開してほしい。
そして何と言っても驚きなのが、本作はノエミ・レフォート監督の実体験をベースにした自伝であるという点である。ノエミ・レフォート監督は実際に『Calling Julia Roberts』という短編映画を自主制作して、ジュリア・ロバーツにそれを直接届けるためにニューヨークに行っていて、そういう意味で本作の内容はまったく陳腐ではない。さらに言うと、現実ではもっと陳腐だと思われるような偶然の出来事があったために、そのエピソードは本作には含めなかったそうである。結局ジュリア・ロバーツが会えたかどうかも、現実と本作では異なっているようである。