ぶみ

DOGMAN ドッグマンのぶみのレビュー・感想・評価

DOGMAN ドッグマン(2023年製作の映画)
3.5
規格外のダークヒーロー爆誕。

リュック・ベッソン監督、脚本、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ主演によるフランス製作のドラマ。
「ドッグマン」と呼ばれる男の半生を描く。
主人公となるダグラスをジョーンズ、初恋相手の女性サルマをグレース・パルマ、精神科医デッカーをジョージョ・T・ギップス、保険会社の男アッカーマンをクリストファー・デナムが演じているほか、クレーメンス・シック、マリサ・ベレンソン等が登場。
物語は、犬を積んだトラックが警察に止められるシーンでスタート、運転していたダグラスが留置所でデッカーと面会し、自らの半生を語るスタイルで進行していくのだが、まず特異なのは、やはり犬に囲まれて生活し、いつしか「ドッグマン」と呼ばれるようになったダグラスの存在。
デッカーと語ることで過去に何があったかを回想しつつ、現代に繋がっていくこととなり、壮絶な生活を送っていた少年時代から、ドッグマンへと変貌していく様をジョーンズが見事に演じ切っており、自然とダークヒーロー的な存在のドッグマンに肩を入れたくなることに。
特に前述の壮絶な少年期を経て、初恋、失恋を経験していく青年期のエピソードは、観ているこちら側のハートをギュッと締め付けてくるものであり、説得力は抜群であると同時に、クライムものでありながら、丁寧にドラマを盛り込みつつスタイリッシュに仕上げてくるあたりは、ベッソン監督の真骨頂とも言えるもの。
そして、もう一つの主人公と言えるのは、数多くの犬であり、下半身に障害を抱え車椅子生活を送るダグラスの手足のように動く様子は、どのように撮影したのか不思議なほど。
そんな監督のきめ細やかな演出が見られるなか、ダグラスの歌唱シーンにおいて、明らかに口元と歌声や声質が合っていなかったのは残念であり、多少下手でも良いのでダグラス本人が歌うか、完璧なアフレコをしてもらいたかったところ。
失恋した時の何とも言えない喪失感を滲ませた表情が天下一品であり、ダークヒーローの半生をベッソン監督流のフィルム・ノワールで描き出しているとともに、そんな刺激的な内容を、サブウーハーと重低音に連動して震動する仕掛けを内蔵したシートによる重震シアターで堪能できた一作。

たとえ歩けても、行く場所すらない。
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