晶

DOGMAN ドッグマンの晶のレビュー・感想・評価

DOGMAN ドッグマン(2023年製作の映画)
3.5
主人公である謎の男ドッグマンを演じるケイレブの演技がすごくいい。
でも、愁いを含んだその見事な人物造形のせいで、主人公の「謎の男」感が映画冒頭からあまりない。
「なんか、色々事情あるんですよね・・?」と割と落ち着いて話を聞くモードになってしまって、何かハラハラできなかった。

そういうタイプの映画じゃないと言われてしまえばそこまでだが、WHY?の要素が「女装の中年男」「荷台に犬100匹」しかないのはツカミが弱く感じてしまった。
そういうタイプの映画じゃないと言われてしまえばそこまでだが、例えば「末端価格1億ドルのコカイン」とか「大量の軍用の火器」とか無暗に不穏な要素を足しておいてくれれば、もう少し前のめりに映画に向かい合えたような・・・。
いや、そういうタイプの映画じゃないと言われてしまえばそこまでなんだけど。

とはいえ、いい場面も多く、ドラッグクイーンの人たちがいい人ばかりでほっこりするし、わんちゃんはかわいい。
ただ、幼い息子のいる女精神科医との交流や、シェイクスピアを暗記してる設定など、面白くなりそうな要素が、結局大きなドラマには繋がらずもったいない。
各シークエンスは撮影もよく完成度が高い。もう一回観たいシーンも結構ある。
なのに、なにかカタルシスを感じられない。
そのあたりがリュックベッソンらしさか。とはいえ嫌いにはなれない佳作。
晶